クリスマスイブはサチ母の誕生日ということで、毎年近場の温泉旅行に行っている。去年は箱根の保養所に格安で宿泊でき、皆大いに気に入ったのだったが、予約抽選申し込みが2ヶ月前からと決まっており、今年はそのタイミングでジェイジェイが中国に出張、と忙しくしていて、すっかり申し込むのを忘れてしまったのである。
今年はどうするのだろうと思っていたら、ジェイジェイはさくさくと鬼怒川の旅館を予約したようだった。あさやというなかなか素敵な旅館で、彼によると旅館の吹き抜けがまるで「千と千尋の神隠し」のようだと説明を受けた。高かったろうに。私たちのためというより、趣味のいいサチ母のため(裏を返すと息子に対し容赦ないダメ出しがある…)なんだろうなと直感的に思った。息子とはいつまでも息子である。
トゥットゥは誰に教えてもらったのだか、12月に入ると「おんせんいきたいね〜。」と言い始めたものだから、ジェイジェイは喜んで「おばあちゃんの誕生日に行くんだよ!」と期待を煽った。あのアンパンマンミュージアムよりも期待値が高まったようで、そのイベントが終わった直後から、保育園の帰りに「いつおんせんにいくの?」の私に尋ねるようになった。
<チェックイン>
さて、期待値の高まった12月19日当日。15時頃旅館に到着すると「千と千尋」という噂は本当のようで、吹き抜けに大きなシャンデリア、クリスマスツリーにクリスマス音楽を奏でるパイプオルガンなど、実に豪華な館内で感動した。ナイスチョイス、ジェイジェイ! もちろん誕生日のサチ母のためというのが一番だろうが、来年の今頃、私は0歳児育児中となるため、温泉行きはお預けになることから、少し気張ってくれたことがわかって嬉しかった。
チェックインを済ますと皆、浴衣に着替え。なんとトゥットゥのような小さな子供用の浴衣と袖なしの丹前が用意してあり、彼女も大喜びだった。その姿でまずは皆で風呂に行こうということになった。3種類の風呂(露天風呂、大浴場、滝の湯)が用意されているということでまずは露天風呂に行くことにした。
<露天風呂>
露天風呂に直行した。2015年4月にリニューアルしたばかりの屋上の美しい風呂で、まだ日が高いうちに山の景色を楽しみながらの入浴となった。屋外ということで湯の温度も42度と高めであったが、心地よいものだった。
トゥットゥはというと、家でも湯船には一人では怖がって浸かることができないのだが、私が服を脱ぎ終わる前からサチ母によって強引に連れて行かれ、なんとか浸かっているようだった。後で湯船の彼女らに合流すると、トゥットゥは私のほうを見てこっそり「おふろこわいの。」と言った。サチ母、張り切りすぎ…。
<夕食バイキング>
そして夕食。ジェイジェイによるとなんでもバイキング形式の食事が一番の売りで、関東じゃらん泊まってよかった宿【バイキングの宿】受賞ということが、この宿を決めるにあたり一番の決め手となったそうだ。私たちは19時に食堂に行くと、予想通りの食事も人も盛況ぶり。サチ母はこれでもかというくらい大好きなカニのボイルをお皿に盛って食べていて、これだけで誕生祝いにこの宿にしてよかったと思えた。
トゥットゥは昼寝をせずにノンストップではしゃいでいたため、ここにきてぐずってぐずって寝落ち。そのため私はあまりゆっくりとご飯は食べられなかったが、食べ過ぎにならずによかった。ご飯が終わってトゥットゥを抱っこで連れ帰る頃には覚醒。
<大浴場>
お腹が落ち着いた頃、今度は皆で大浴場に出かけた。冬至が近いため、ゆず湯のサービスがあるということで楽しみにしていったが、ゆずがプカプカと浮かぶ湯船の想像とは異なり、大量のゆずが入った袋がお風呂縁に結びつけられいて、風情がなくて少しがっかり。
ところが普段からキラキラやピンク色、ハート型といった可愛いもの、香水やお化粧といったものに興味のある乙女趣味なトゥットゥがしきりと「いいかおり〜!」と言っていたものだから、私の気持ちも持ち直した。持つべきものは娘である。
<朝風呂>
トゥットゥの就寝に合わせ、皆揃って22時過ぎに就寝し、翌朝の風呂に備えることにした。まだいっていない滝風呂に行こうと思っていたのだが、早速朝5時スタートに合わせて再び露天風呂に行ったジェイジェイが帰ってくるなり「星空がすごい!」というものだから、もう一度露天風呂に行くことにした。メガネを持って。
5時半ごろ、先客は2名。昨日以上に屋外は寒い。そんな寒い思いをしてまで露天風呂に行ったのに、ジェイジェイが感動するほどの星空は見えない。私の目が悪いのか。私の感度が悪いのか。明け方の暗い空にじっと目を凝らしながら湯船に浸かっているとあることに気づいた。山のシルエットが見えるのである。山の端が少しだけ白い。ああ、 夜が明け始めているのだ。どおりで星が消えてしまったわけだ。残念。
トゥットゥは爆睡中。サチ母は私と入れ替わるように滝風呂に行った。
<朝食バイキング>
夕食のバイキングに引き続き、朝食バイキング。朝ごはんもとても美味しそうで、私は和食から少しずつ、そしてパン食から少しずつ食べた。満たされた気分。ジェイジェイもサチ母も夕食あれだけ食べてお腹が痛いと言っていたのに、朝からやっぱり山盛り…。さすが親子と思った瞬間であった。トゥットゥは締めのアイスクリームが気に入ったようで、「チョコレートアイスくださーい。」と2回もおかわりをしていた。
<おみやげ>
大型ホテルの場合、売店でおみやげを買うのも楽しみの一つだ。トゥットゥは前日、お風呂上がりに売店に寄った際、粘り強くサチ母におもちゃが欲しいと言い続け、キティちゃんのお家セットのようなものを買ってもらった。私としては簡単に買い与えてほしくないとは思うのだが、この度はサチ母の誕生日の企画なので、その言葉は飲み込んだ。
そして翌日、朝食後に帰宅準備をして部屋を出た後、チェックアウト前に売店に立ち寄った。一通りぐるりとお土産品を見て回る中で、乙女趣味なトゥットゥはドイツの織物グッズで有名なフェイラーのコーナーに釘付けになっており、花の模様のハンカチやカバンを見ては、しきりと「きれいだねぇ」と言い続けた。欲しいのか? しかし典型的な黒地の織物だったためおばさん趣味すぎるなと思い、「これは高くて買えない。大人のものだ。」と説得して思いとどまらせた。
その代わりと言ってはなんであるが、隣に練り香コーナーがあり、そこでも立ち止まって手に取っては「いいかおりだねぇ」というものだから、いろいろ嗅がせて気に入った香りを記念に買ってやった。彼女が選んだのは沈丁花の香りだった。京都のおみやげらしいが、細かいことは言うまい。
<チェックアウト>
お土産も買っていよいよチェックアウト。するとトゥットゥは
「さ、ホテル(のお部屋)にもどろうか。」
家族皆で爆笑した。よほどこのホテルが気に入ったようだった。トゥットゥは昨日サチ母に買ってもらったキティちゃんの玩具で遊ぶ気満々だったようである。「もうおうちへ帰るのよ」と説得すると寂しそうな顔をした。
私たち大人はすでにお風呂に食事に大変満足し、感謝の気持ちをジェイジェイに伝えていたが、最後の最後でトゥットゥにも認められ、ジェイジェイも父親冥利につきるなと思った。本当にありがとう、ジェイジェイ。