トゥットゥは11月半ば頃からぶれずに「メルちゃんの救急車が欲しい。」と言い続けていたので、私達親のプレゼントは迷うことがなかった。24日朝、枕元に希望どおりのものを見つけた時のトゥットゥの顔といったら。最初は寝ぼけていたが、次第に覚醒した表情となり、
「この箱を開けたいんだけど。」
と主張した。保育園から帰ってからと説得するのが大変だったが、喜んでくれたようで本当によかった。
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一方でサチ母、デコ母の二人のおばあちゃんたちはトゥットゥへのプレゼントに頭を悩ませていたようだった。
デコ母には電話でしょっぱいアンパンマンミュージアムの出来事を話したのだが、そこからお人形のお友達を…と思ったようで、追加でカレーパンマンとバイキンマンの同サイズの人形、そしてアンパンマンのキューブパズル、お菓子の詰め合わせが送られてきた。しかし、なぜカレーパンマンとバイキンマンのチョイス…? アンパンマンの盟友とくれば、カレーパンマンか食パンマン、ガールフレンドといえばメロンパンナちゃんではないか。
「造詣がおもしろかったのでカレーパンマン。悪者であまり売れてなさそうで可哀想だったのでバイキンマン。」
答えがデコ母らしい。
かくして、二人の仲間が増えてトゥットゥは大喜び。特にカレーパンマンは好きなのだ。そして悪役のバイキンマンが増えたことが遊びのバリエーションを増やした。今までは仲間の人形で「ウフフキャッキャ」とままごとをしていたのが、勧善懲悪のストーリーを考えては悪役を「アンパーーーンチ!」「アンキーーーック!」とやっつけるという、いささか乱暴な遊びが加わった。人間にはいろんな側面がある。正義を求める心、これも当然の動きなのだろう。
そしてサチ母はというとインターネットショッピングでそちらで都合のよいものを買ってくれと依頼された。トゥットゥは少ない服でメルちゃんの着替え遊びを楽しんでいることから、着せ替えのお洋服を2つほど購入させてもらった。
ところがである。12月23日の少し早いクリスマス家族会の当日、サチ母は出先の家電量販店から電話をかけてきた。
「今、玩具売り場にいるのー。プレゼントはもう用意しておいてもらってるのは知ってるんだけど、それ以外にも何か買って行こうと思うの。何がいい?」
自分で買ったものをトゥットゥに手渡したくて仕方ない様子だった。「買わなくっていいですよー。」などと半端な態度で遠慮しようものなら、ご自分の意思で嵩の大きな高価なものを買い与えかねない雰囲気が電話口からでも漂っていた。何か指定しなくては! 必死で考えた。
「トイストーリーの『バズ』をお願いします!大人の手のひらサイズの!!」
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実はクリスマス1週間前あたりから、いつも保育園から帰る時間帯、方向が同じの仲良しのY君が映画「トイストーリー」の「バズ」を象った何かを持ってきていたのだ(保育園の預け時間最中は、玩具は個人ロッカーにしまわれている)。サイズ的にはプラレールと同じで車両の中間部に見えるのだが、何の玩具なのかわからない。
トゥットゥに「トイストーリー」を見せたことはなかったのだが、なぜかそれが「バズ」を象ったものだとわかったようで、Y君が帰り際その玩具を手にしているのを見て
「バズだーーーー!」
と大騒ぎした。そしてすぐにお願いをした。
「トゥットゥにもかーしーて!」
ところが、Y君にとってそれはとても大切なものだったようで、トゥットゥはあっさりと断られた。お友達の玩具を奪ってはならない、きちんと保育園で躾を受けているようで、その後もトゥットゥはY君に何度かお伺いを立て、力ずくで奪うことはしなかった。Y君のお母さんも息子に貸してあげるように促してくれたが、Y君は頑なに断った。そしてトゥットゥは断られるたびにがっかりした。
「トゥットゥがいいこじゃないからかしてくれないのかなあ…」
「違うよ。トゥットゥはいい子だよ。だけどY君はあのバズがとても大切で貸したくないんだよ。諦めようね。」
親として胸が痛かった。
別の日の帰りもY君とやはり同じようなやりとりが行われている時、私はY君のお母さんに何の玩具か聞いた。
「あ、あれね。トイストーリーのプラレールやねん。でも限定っぽくて、大きな玩具屋行かなあかんかも。」
なるほど。私は家に帰ってすぐにAmazonで検索した。案の定品切れだった。あまりにもバズ、バズ言うので、プラレールでなくてもバズの人形かなにかあれば買ってやろうかとも思った。他のバズのおもちゃも検索した。
これが9800円!? 3000円の間違いじゃないのか?? ダメだ。こんなに高くては買ってやれない。1000円くらいの手のひらサイズのバズ
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以上がサチ母の申し出にとっさに「バズ」が思い浮かんだ経緯だった。そしてその日、サチ母は手のひらサイズのバズを持ってきてトゥットゥに手渡してくれた。
「バズだーーーー!」
トゥットゥは大喜びだった。サチ母も満足そうだった。
トゥットゥは翌日早速バズを保育園に持っていった。目的はもちろん、帰りにY君に自分のバズを見せることだった。
「Yくーーーん、トゥットゥのバズ、見せてあげるー!」
トゥットゥは帰りに一緒にになったY君に駆け寄って、自分のバズを喜び勇んで見せようとした。ところが運命は皮肉である。Y君の手には新品のシンカリオン
「ごめんなー。うち、昨日クリスマスプレゼントにシンカリオンあげてん。それでY、案の定自慢しようって持ってきてん。」
トゥットゥはせっかくバズを見せようとしたのに、Y君は自分のシンカリオン自慢の満面の笑みであった。トゥットゥはY君に振られてしまったのである。あの寂しそうな後ろ姿と言ったら…。またもや私の胸が痛んだ。
しかし思った以上にトゥットゥはたくましかった。
「シンカリオン、みーせーて!」
とY君に喰らい付いているではないか。ははは、そうでなくっちゃ。子どもは親の心配を超えて成長していくのだなあ。
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トゥットゥの2015年クリスマスプレゼントリスト(頂いた順)
ミッキーマウスパズル(保育園のクリスマス会にて保育園より)
駄菓子(保育園のクリスマス会にて町内会より)
カレーパンマンのぬいぐるみ(デコ母より)
バイキンマンのぬいぐるみ(デコ母より)
アンパンマンのパズル(デコ母より)
アナと雪の女王のおやつセット(デコ母より)
バズ・ライトイヤーのミニフィギュア(サチ母より)
メルちゃんの傘(サチ母より)
メルちゃんのお洋服・うさぎさんのワンピース(サチ母より)
メルちゃんのお洋服・黄色いパーカーとピンクのスカート(サチ母より)
メルちゃんの救急車(ジャッキー&ジェイジェイより)