2016年1月18日月曜日

飛行機・羽田空港うんち事件

山口への帰省中。トゥットゥは当然のことながら便秘になっていた。慣れない環境なのだから仕方ない。毎日下剤は飲ませていたものの、経験上4日以上便秘が続くとまずいなと思いはじめ、翌日が4日目に当たる東京に帰る前日の金曜日に下剤を多めに飲ませた。通常6滴のところ8滴である。

下剤の効きは説明書によると約7〜12時間後となっていて、夜寝る前に飲ませると朝出ることになるのだが、トゥットゥの場合、主に保育園から帰って19時過ぎに食卓の下に潜ってすることが多かった。トイレトレーニング中のため「トイレでしよう。」と誘うのだが、「ここでする」と言って猫や犬のように下に潜って私たちの目が合わないところで頑張るのが通常となっていた。

この効きから推測するに、おそらく多く飲ませていることから朝一で効くか、いつものように東京に帰ってから家でするかのどちらか。実際は前者となり、午後からのフライトに合わせるように、午前中実家で2回ほど大きなウンチをしてくれた。これで便秘の心配、飛行機の旅の途中のトイレの不安も払拭された。

しかし私はこの安心から一つ読み間違えをしていたのである。




飛行機の旅は順調だった。2歳11ヶ月のトゥットゥを私とデコ母の膝に順番に乗せてと思っていたのが、なんと隣の席が空いていたのである。膝に乗せることもなく、トゥットゥに窓際の景色を楽しませながら、自分たちの幸運に感謝した。一番最初の0歳でのフライトの気張り具合を考えると、楽チンになったもんだと思った。

「東京羽田空港着陸に向けて高度を下げていきます。」

この機内放送がかかった。偏西風の関係上、上りは早いのである。早い、もう東京か〜と余裕をかましていた時だった。

「うんちする。」

窓際の席でトゥットゥがつぶやいた。「へ?」と思う間もなくトゥットゥの体がロック状態になった。ふんばっているのである。そしてかぐわしき香り…。うんちは今朝の2回でしきったのではなかったか。すぐさま頭を駆け巡った。トゥットゥがうんちをお腹にためていた日数を。水、木、金、3日分だ。そして朝の量、ああ、あれでは2日分ではないか。栓をしていた固めうんちが朝1回目で出たのだ。この事態を想像していなかったなんて!

デコ母が

「おむつ替え大丈夫?」

と心配そうに聞いてきたが、そこはさすがにトイレトレーニングの終わっていないトゥットゥのためにおむつセット一式を持ち歩いているので心配はなかった。大丈夫だよと小声で答えて、すぐにトゥットゥを抱っこしてトイレへ向かった。

トイレで悲劇は起こった。

トゥットゥのうんちがやわらかだったのである。そうだよ、本日3回目のうんち。やわらかに決まってるじゃないか!

トゥットゥには飛行機に乗るために少しおめかしさせようと、私自身がお気に入りのチェリーピンクのストレッチの効いた細身ズボンを履かせていた。そのズボンを下ろすと、ズボン内部にはうんちがべったりとついていた。それに伴いトゥットゥの腿にもついた。ああ、このズボンはもう履けない。トゥットゥは泣きながら

「足にうんちが付いた。」

と惨状を訴えた。

「泣きたいのはお母さんだよ!」

思わずトゥットゥに向かって言ってしまった。彼女に罪はないのに。

ズボンとオムツを完全に脱がせ、汚れてしまったそれらをゴミビニールに入れて、持ってきたおしり拭きで懸命に彼女をキレイにした。ずっと彼女は泣きべそだった。

その最中にベルト着用サインの音が聞こえた。そしてCAによるトイレノックの音。

「すいません、子どものうんちの処理に手間取りまして!すぐに出ます!!」

私は小さく叫んだ。どんどん高度が下がっているのがわかる。半分パニックである。そしてもう半分の残った理性でトゥットゥにオムツを履かせ、壁や床に飛び散ったうんちもキレイに拭き取り、ゴミビニールに入れて、トゥットゥを担ぎ上げ、トイレの扉を開けた。そして席に戻った。





おむつセット一式を持ち歩いていると言っても、替えのズボンはもってきていなかった。3歳前にもなってハデに漏らすなど想像もしていなかったのだ。席に戻ったトゥットゥはオムツ姿のままだった。幼い彼女はまだ恥じらいの気持ちがないようなので、特にオムツ姿を気にする風ではなかったが、私やデコ母はその姿はあまりに可哀想だからと、着陸して空港に出る時にデコ母のマフラーをスカートのようにして腰に巻いてやった。

ジェイジェイが迎えに来てくれていて、トゥットゥは歩きにくそうに、それでもお父さんに向かってうれしそうにダッシュをした。その時のジェイジェイの奇妙な顔といったら…。事情を話して、替えのズボンかスカートを買いに行こうとした。するとトゥットゥが

「お母さんと一緒にいく!」

と言うではないか。マフラーを腰みのにした不思議な格好の子どもを空港で連れ歩く母親…。絵にならない。トゥットゥに丁重にお断りしたが、付いていくときかない。仕方なく一緒に買いにいった。

第2ターミナルの4FのTokyo'sTokyoでかろうじて子供服を見つけた。可愛いデイジーのワンピース、9000円也。買えるか、こんな高いもの!思わず一人突っ込みをしてしまった。通常ならミュージアムショップのようなキュレーションの行き届いた店内に、それを買うかどうかはともかくウキウキ気分になりそうなものだが、今は非常事態、興奮状態なのである。

トレーナーはたくさんあるが、意外とボトムズがない。かろうじてあったのが黄色い線路模様のレギンス、赤いダルマ模様のレギンスが3200円。高い。ユニクロなら790円なのに。しかし文句は言えない。あるだけありがたいのだ。両方明らかに男の子向け柄に思われたが、赤のダルマのほうをチョイスした。レジスタッフにすぐに着るので包む必要はないと伝えると、トゥットゥのへんちくりんな姿を見て理解してくれたようで、すぐに着替えの場所まで教えてくれた。

それを多目的トイレで着替えさせて、ジェイジェイとデコ母の待つところに行くと、ジェイジェイは一言。

「そのダルマ柄、えげつないね。」

これしかなかったのよー!!!

そして家に帰って気づく。空港で捨ててきた使用済みオムツや汚物拭き取り済みのペーパータオルに混じって、お気に入りのズボンまで捨ててしまったことを。あまりに悔しくて、翌日そのズボンを買ったお店に行き、同じものを求めた。サイズがなかったので110cm。

そして思い出す。ダルマ柄のレギンスを見るたびに。このうんち事件を。