2016年5月16日月曜日

貯血女子トーク

私は前置胎盤のため帝王切開で出産に臨む。輸血に備え、自分の血を貯血をしておくことにしたのは、前のブログで説明をした通りである。4月に一度貧血の検査をしていて見事クリアしていたので、自己輸血は問題ないと思い、気軽にサインをした。


ところが入院してすぐ鉄剤を1週間飲んだものの、血液検査の結果、貧血の値がクリアできなかった。なぜだ。薬まで飲んだのに。前の値は幻だったのか。助産師さんに聞くと次のような解答が返ってきた。赤ちゃんが大きくなって血流量が多くなり、血が薄まる。すると貧血が出てくると。なるほど。血の中の鉄量は変わらないものの、濃度が変わってしまったということか。

確かに30週0日でのエコーは赤ちゃんの体重は推定1200g、「少し小さめだけれど…大丈夫。」と言われた。ところが入院した32週では1900g、「めっちゃ順当です!」と主治医から太鼓判。え、たった2週間4日で700gも増えるんかい? その1週間後33週では2200g、1週間で300g…この伸び率はなんだ? 思わず先生に「増えすぎじゃありませんか?」と聞いてしまった。「じゃあ、間取って2100gにしよっか。」 いえ、そういう問題じゃないんですがね…。

とにかく血が薄まる要因はわかった。すぐに貯血できないとわかって、350ml×3回の貯血の野望は消えた。もう1週間鉄剤を飲んで、少しでも自分の血液を貯血に回せるように頑張ろう。




鉄剤を飲み始めて2週間後、見事、貧血の値をクリアした。主治医に「貯血ができます。」と言われ嬉しかった。が、すぐに別の心配が襲ってきた。貯血と言葉は変えているが、とどのつまり献血と同じことをするのである。私は献血は実に30年以上ぶりなのだ!

高校時代に初めて献血を行った。献血活動の啓発も兼ねて高校に献血カーが出張してきてきたのだ。私のような大病を一度もしたことのない健康体、このようなところでお役に立たねばと思い、奮って参加をした。ところがである。初めて献血の針を見た時の衝撃と言ったら。

「鉛筆の芯!」

針が太いのは言わずもがな、血液採取しやすいように針の断面が極限まで斜めで、穴が黒々と大きく見える(調べたところによると17ゲージ、直径1.4mmらしい)。その恐怖に耐えてなんとか刺した後、血が出にくいからと、看護師に針をグリグリとやられたのだ。痛いーーー(><)! もう二度とやるもんかと心に誓った。

あれが再び身の上に起きようとしている。帝王切開で切腹(?)するより前の恐怖である。デコ母に電話で話すと

「お母さん、採血とか、針を刺されるのはへっちゃらよ。(だからあなたの気持ちに添えないわ)」

らしい。ああ、この方への大腸内視鏡の事前ヒアリングでも「ううん、全然、へっちゃらだったわよ。」を信じて挑んだら、私は大変なことになったんだっけ。相談を間違えました。

とにかく恐怖で30ン年ぶりの献血に挑んだのである。




400ml。先週取れなかった分、50ml増で。私は恐怖のあまり空元気で色々と周りの人に話そうとした。周りにいるのは主治医の女性。研修医の女性。若手の助産師の女性2名。皆女性。主治医は私の様子を察してか、「じゃあ、Sさん。面白話よろしく!」と助産師の一人に話を振った。

助産師はいきなり話を振られて困っていたが、「あ、そうだ!」と話し始めたのは、ゴールデンウィークの「肉フェス」の話だった。そのうち研修医は私の腕にすっと針を刺した。その腕の見事なことと言ったら。刺された瞬間、思わず私は「上手です!」と言った。「肉にはご飯が欲しい。」「各地のJAはブランド米ブースを出店すべきだ。」「いや、ご飯を入れるとお腹がいっぱいになってしまう。」そんな話をしていたら、あっと言う間に400mlが取られた。

次の週、二度目の400mlの貯血。血液検査後にゴーサインが出る。よくよく考えると日本赤十字の献血サイトでも、女性の400mlの全血献血の条件はかなり厳しい。年齢18-69歳、体重50kg以上、年間献血回数400ml×2回以内、また2回目は16週間後から。それを1週間後にやるのだから、どうなんだ?と少しおっかなびっくりだったが、血液検査をした上なので、問題ないのだろう。

この時の貯血は前回のメンバーに加え、新たにこの病院系列の医学部の女学生が加わった。この学生に面白話を振ると、サークルメンバーで東京ディズニーランド(以下TDL)に行った話を楽しそうにしてくれた。ああ、可愛いなあ。話す姿を見ているだけで元気がもらえる。

そのうち、主治医が自身も妊娠37週でTDLに行ったら、端境期でイベントが何もなくて寂しかったと話し始めた。「いやいやいや、破水でもしたらどうするんですか!」と突っ込むと「そこはプロなんで、すぐに兆候があったら退園しようかと。」何も起きなかったら良かったものの…。

すると彼女は更に順○堂大学医学部附属浦安病院には某巨大テーマパークから産科救急搬送される人が多いという研究発表を同病院の医師がしたという話をしてくれた(こちらのブログが詳しい)。破水とか早剥とかですか。…さもありなん。質疑応答は「えー、そのTDR(リゾート)では」と誰もがバイアスかかりまくり。浦安で某巨大テーマパークって言ったらねぇ。しかし発表者は最後まで「某巨大テーマパーク」で押し通したそうな。ご立派です。

ほんの10分から15分ではあるが、貯血に関わってくれたメンバーがこのように楽しい時間を作ってくれたおかげで、痛みに対する緊張がほぐれた。実際に緊張がほぐれると痛みに有効なのだと思ったし、緊張をほぐすという意味では、柔らかい女性に囲まれるのがいかに有効なのかがわかった。

手術本番はさすがに女性ばかりでウフフキャッキャというわけにはいかないだろうから、緊張がほぐれるように、自分で何か型を見つけておこうと思う(五郎丸のルーティンのように)。