2016年6月17日金曜日

帝王切開2(当日)

5月下旬某日。私の帝王切開手術が行われ、無事男の子が生まれた。現在は退院して育児に勤しんでいる。これはその時を思い出して記録したものである。(Part2)


手術当日、朝、普通通り6時くらいに目覚める。起きてまず思ったこと。私はまな板の上の鯉だ。私がジタバタしても仕方ないのだ。私は意図的に気持ちの変化を起こさないよう努めた。本来の目的、赤ちゃん誕生という慶事、それすらも傍に置いておこうとする意思。今、思い返すと、正直それくらい怖かったのである。

恐怖を感じないためにはどうするか。一番いいのは別のことで頭をいっぱいにすることである。私はこれから先も滅多にないであろう外科手術をきちんとブログに記録しよう。そのために絶対に自分の五感で体験する細部まで覚えておいてやろう、そういう気概で臨んだ。

結果、タイムスケジュールのような見事に時系列の記憶が頭に張り付いた。
以下、朝9時スタートの帝王切開手術について記載する。

6:40
NST(赤ちゃんの心拍、胎動、お腹の張りを確認する装置つけ)実施

7:30
手術着と加圧ソックスをつける。手術着の下はもちろん真っ裸。手術後は血栓ができやすく予防のために加圧ソックス着用。

7:40
ジェイジェイとデコ母が来る。努めて普段通りの会話をする。

8:10
産婦人科処置室で事前準備。麻酔用筋肉注射をする。大腸内視鏡の時にやった腸の蠕動運動を止めるものと同じか。人によってはこの筋肉注射が一番痛いという人もいる。小さくチクッとする程度。尿道カテーテルを指す。前回の出産に引き続き二度目。力を抜いていれば特に痛くない。この後、抗生剤点滴開始、昨晩の点滴用ルートより装着。

8:50
手術室へ。搬送用ベッドに寝かされる。外科(手術)フロアが異なるため家族と手を振って別れる。いくつもの手術室を通り抜け一番奥の手術室へ。大勢のスタッフがいることに驚く。医師を含めて6名以上はいた。特に外科専門であろう年配のベテラン看護師(女性)のかっこいいこと。まるでゲーム「メタルギア・ソリッド」のスネークのよう。

9:00
準備開始。手術台の上へ登る。胸から下はカーテンが設置されて見えない。輸血用ルート取りを行う。もしもの時に即座に輸血が開始できるようにと説明を受ける。看護師による手術中に流すCDを確認を行う。いつも陣痛室で流れているリラックスCDをお願いした。

9:10
脊髄麻酔を行う。自分の中で一番のハイライト(恐怖の対象)だ。背中を丸めるポーズをとる。私の顔が強張っているのを見て、主治医が色々話しかけてくれる。背中へ局所麻酔、これは脊髄麻酔の為の事前麻酔。小さくチクッとする程度。次は本番の背中へ脊髄麻酔。局所麻酔のしびれの中で長い針を刺した様子。あ、刺しているのねという感覚はあるが全く痛くない。その後、すぐに麻酔の効きを確認。具体的にはじんわり足先が温かくなったか、アイスノンでお腹と胸で冷たさの感じ方の違いはあるかを確認。みぞおち辺りは全く冷たさを感じない。

9:20
手術スタート。「○○さんの前置胎盤による帝王切開を始めます」と医師による号令がある。テレビドラマみたいだ。全く切開の感触がない。「麻酔すげー!」と若干興奮。医師と看護師の淡々とした会話だけが聞こえる。もちろん会話の意味はわからない。外国語のようだ。

9:50
赤ちゃん誕生! 泣き声が聞こえた! しかし取り上げられた感触は全くなかった。赤ちゃんは呼吸ができたのだと一安心する。泣き声が遠くなった。角に連れて行かれて何やら処置が始まったようだ。私の処置は続行。

10:05
赤ちゃん対面。看護師が赤ちゃんを顔のそばまで連れてきてくれた。西郷どんのような眉毛の立派な顔! しかし小顔だなあという感想。この時の印象で自分の中で子供の名前はほぼ決まった。

10:30
輸血開始。止血処置が続いているらしかった。医師の会話を聞いていると、どうも出血が多いらしく止めるのに色々苦労しているらしい。「この血液パックの出口、固まってるよ!」と小さく叫んだのは恐らく研修中の医者か看護師。ああ輸血が始まるのだ。そもそも私の自己血使えるのか?最悪、子宮摘出なのではないかと不安がよぎる。

10:40
お腹の感覚の戻り。恐らく麻酔が切れてきて、明らかに内臓(子宮)を持ち上げたり下ろしたりする感触がある。「早く手術終わってくれ。」と思う。

11:00
オプション手術へ移行。医師の安堵のしたような声から止血が終わったと推察。私も安心する。カーテン越しや照明の反射で見える手業や触っている部位からおそらくオプション手術(卵管結紮)をしているのだろう。

11:15
閉腹。バチン、バチン。ステイプラ(ホッチキス)の音が聞こえる。溶ける糸や接着剤じゃないんだ…。閉腹処置は手術を行う先生の好みって看護師が言っていたような。抜鉤(ばっこう)が痛そうだなと思う。

11:20
手術終了。手術室から退出。産科の看護師に搬送用ベッドごと引き継ぎ。管理入院で一ヶ月お世話になっていた顔馴染みの看護師を見てこの時点で初めて「手術が終わったんだ。」と安堵する。

11:30
部屋へ戻る。家族と対面。サチ母とヤマナちゃんも加わっていた。不謹慎にもジェイジェイに「ここまでは自然分娩より楽」と余裕で伝える。ジェイジェイからも赤ちゃんの呼吸状況からNICU行きの瀬戸際だったが、無事新生児室行きに決定したと聞いて安心する。ということは、問答無用で新生児ブートキャンプ(授乳訓練)ありか…

13:00
家族とお別れ。

ここまでが手術の様子。あんなに恐怖だったのが、喉元過ぎればなんとやらで、本当に13時時点では「余裕〜」と思っていたのだ。この後の体験したこともない痛みをこの時点ではまだ想像できていないのだから。
Part3に続く