毎年この時期になると、ジェイジェイによるサチ母誕生日企画が行われる。去年は箱根だったが、今年はスーパービュー踊り子に乗って伊東に温泉旅行となった。私は鉄分(鉄道好き成分)が多く、東京駅で見たことある窓の大きなあの素敵な特急に乗るのかと思うと、気分は高揚した。それは今や立派な子鉄(鉄道ファンの子供)となったゴッシュも当日はそれを見ると「とっきゅう、とっきゅう」とはしゃいだ。
そしてなんとジェイジェイはスーパービュー踊り子のボックス席を取っていてくれたのである。ボックス席は2号車グリーン車両であり、小田急ロマンスカーの左右ぎゅうぎゅうのボックスとは違い、片側のみのゆったりとしたものだった。1号車にはグリーン車客のサービスとしてサロン室を備えた売店もあり、遠くの売店まで足を運ばなくてもよいようになっていた。ここでゴッシュにこの電車のNゲージを買ってやった。ゴッシュは旅行中常にこれを握りしめていた。いいお土産を買えたと思った。
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私は伊豆半島東側は初めてで(西側は独身時代、ヤマナちゃんと車で運慶仏を身に願成就院に行った)、いつも新幹線の車窓から見える熱海からイメージする伊豆と違わず、眼前に海が開けていて明るく、駅前もリラックスムードでいっぱいだった。温泉旅行だけでは子供たちが退屈するからと、そのあたりもジェイジェイは抜かりなく、事前に調べて遊園地である伊豆ぐらんぱる公園に行くことを計画した。
口コミを見るとなかなか良さそうではあるが、入場料はそこそこする上に(大人1200円、未就学児400円、詳細はこちら)、寒空の下、子供たちに付き合って屋外で遊ぶのかと思うと少し気が滅入った。子連れなら覚悟しなければならない憂鬱なのかもしれない。その上、これを見るなら寒さも耐えらえるという大人向けのイベント、スマホのCMで有名になったイルミネーションを見るには昼の部と入れ替え制でお金がかかってしまい、仮に見るとなるとホテルの食事に間に合わなくなるためあきらめざるを得なかった。
ところが私の予想に反し、このぐらんぱる公園、無料で遊べるエリアがなかなかなのである。長い長いローラー滑り台、ハンモックエリア、トランポリン。娘と全てを遊び倒してこれで十分だと思った。有料の乗り物やアトラクションもきちんと子ども向け、大人向けあり、それぞれが楽しめるよう工夫されていて、娘とチケットを握りしめて一緒に楽しめそうなものを探して楽しんだ。ジェイジェイは私の遊具好きまで読んでいたのであろう。寒さで渋々の私はいつの間にかトゥットゥと二人で笑顔になっていた。
その中でも一番印象に残ったのが、キャンドル作りである。メインゲート左に進んで、のりものと太陽の広場という子ども向けのエリアの側に温室のような小さな小屋があって、そこでガラス細工を埋めた透明なゼリーキャンドルを作れるというものだった。「キャンドル作り 1000円から」と張り紙があり、作るのに30分くらい時間がかかるだろうし、高いなと思って通り過ぎようとしたのだが、トゥットゥが「これに行きたい!」と強く主張したのである。
ジェイジェイとサチ母は、太陽の広場という子ども向けのエリアにあるお金を入れて動く電車の乗り物に釘付けのゴッシュの相手をしていて、自分たちがゴッシュを見るからキャンドルを作っておいでといってくれた。
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キャンドル作り。せっかくなので私もトゥットゥと一緒にやることにした。まず容器を選ぶ。小1000円、大1500円。四角か丸か。そして無料パーツの説明。キャンドル本体、芯、敷き詰める砂。そして有料オプションパーツの説明。1.5㎝前後の小さなガラス細工、こちら一つ追加の度に300円(小さなもの、補助的なもの、不人気なものなど一部100円ある)。ざっと見ただけでも100種類近くある。
それを聞いてヤラレタと思った。こんなかわいいガラス細工、どんどんキャンドルに突っ込みたくなるに決まってるじゃない。300円がどんどん飛んでいくことが目に見えた。それは現実となった。トゥットゥにパーツは3つまでとくぎを刺しておいたのに絞り込めず、補助パーツも含めで5つとなった。恐竜、新幹線、いるか、スイカ。なんだ、その組み合わせ。
「全部トゥットゥの好きなものなの!」
あれもこれもと迷い迷っている姿が可愛く、
「あー、もう全部いいよ」
と言ってしまった。その代わり自分のパーツを2つまで絞ったのだが…。
容器にスプーンですくった砂を敷き詰め、真ん中に芯を置き、ピンセットでガラス細工を置いていく。トゥットゥは5歳ながら私の作業を見よう見真似で器用に進めていった。新幹線が空を飛んでいるようにしたいと言うので、お店の人に教えてもらったとおりアクリルの透明円柱パーツに接着剤で新幹線ガラス細工をくっつけて高さを出す。それをそっと並べる。全てパーツを並べ終えるととお店の人に渡す。30分後、ゼリーキャンドルが入ったものが手渡される予定だ。
トゥットゥは作り終えた後言った。
「おばあちゃんお誕生日なんでしょ。これプレゼントにあげるんだ!」
ええええ、そうだったのか! 私は感心した。
確かにこの旅行はサチ母の誕生日プレゼントだけれど、ことさら子どもたちにはそれは強調しなかった。しかも子どもたちのために伊豆ぐらんぱる公園に連れてきたことから、トゥットゥとゴッシュが楽しめればいいくらいに考えていたのが、トゥットゥはおばあちゃんのことを考えていたのか。やさしい子だな。私は少し涙が出そうになった。
トゥットゥは「いつあげようかな」と私に相談してくるので、出来上がったらすぐ渡すといいよと言った。
ホテルではみんなでお風呂に入ったが、朝風呂はトゥットゥはおばあちゃんにくっついて二人で行った。おばあちゃんが好きなんだね。