2015年2月25日水曜日

鬼とおばけのいる世界

有名な育児マンガ「ママはテンパリスト」。漫画家・東村アキコさんとその息子・ごっちゃんの主に2歳くらいから小学校にあがる6歳までの話である。このマンガに鬼が登場する。本当にそのエピソードが面白い。母親が聞き分けのない子の躾のために「鬼がくるよ!」と言うのだが、東村さんの迫真の演技(周囲にも強要、本人への鬼の乗り移りアリ)により「鬼がいる東京」がごっちゃんにとってリアルになるのだ。青山に行くと「青い鬼」を連想し、赤坂に行くと「赤い鬼」、高田馬場に行くと「高田のばばあ(鬼婆)」を連想するまでになる。

これは子どもができたら使わないと! 私はこのマンガを見てからというものずっとそう思っていた。トゥットゥが生まれて、いつ鬼を登場させよう、どうやって登場させよう、「桃太郎」のような御伽噺からから?と考えていると、その機会は前触れもなく訪れたのだった。そう、それは1歳で迎える節分だった。

節分を迎えるまでトゥットゥには鬼という概念はなかった。保育園で節分が行われた日、迎えに行くと早速張り出された壁新聞の赤鬼青鬼ブラザーズの写真を見て「おに、こわい、こわいねー」と言った。おお、鬼を覚えたのか。軽く感動を覚えた瞬間だった。その日だけかとおもいきや、次の日も保育園で写真を見るたびに「おに、こわい、こわいねー」と繰り返した。家に帰っても鬼の話をした。鬼が存在として定着したのだ。教育上「鬼」を使うタイミングがとうとうやってきたのだ!




トゥットゥはいつも21時には寝かしつけをするのだが、ぐずぐず言って居間に居着く日、ベッドの上でキャッキャとはしゃぐ日、とにかく21時半までに寝たためしがなかった。平日は保育園に行かなければならないので7時に起こす。しかし土日は放っておくと8時過ぎまで寝るので、やはり10時間睡眠が一番リズムがいいのだろう。従って9時間睡眠で起こされる平日は機嫌が大変悪かった。ジェイジェイも私も二人がかりでも登園準備に手こずった。

節分の翌々日。やはり寝ないで愚図っていたので、思い切って言ってみた。

「鬼がくるよ!」

ジェイジェイも乗ってくれた。

「鬼、こわいよ。早く寝ないと!」

最初トゥットゥはきょとんとしていた。これはリアリティが必要である。鬼は外からやってくる。そうだ! 私は寝室にジェイジェイとトゥットゥを残して、一人隣の居間へ回り込んだ。そしてそこからベランダに出た。そして窓を叩いた。

ドンドンドン! …ドンドンドン! …ドンドンドン!

しれっとした顔をして再び寝室に行くと、ジェイジェイが煽っていた。

「ほら、鬼がきたじゃん。怖いよー。鬼、怖いよー。」

トゥットゥは明らかに固まっていた。そして私の顔を見て振り絞るようにこう言った。

「おにがドンドンドン。こわい、こわいねー。」

そしてこの後、ぐずることなく、じっとして寝た。翌朝、起きると第一声が

「おにがドンドンドン!」

しまったやりすぎたか。反省である。

やりすぎはよくない、とっておきの時に鬼を使おうとジェイジェイと誓った。しかしそんな誓いはどこへやら。その後もすんなり就寝しようとはしなかった。仕方なく21時頃になると、「鬼がくるよ!」と言うのが決まりになっていった。トゥットゥは鬼と聞くと、まっすぐ寝室へ行くようになった。





トゥットゥは整骨院に便秘マッサージに定期的に行くと待ち時間にそこにおいてある絵本や図鑑を見る。最初は「アンパンマン」や「のりもの」を見ていたものの、次第に大人の本に興味をもつようになる。そして鉄板となったのが、なんと葛飾北斎の画集だった。北斎、ホンモノは幼児をもとりこにするのだなと関心した。その北斎の画集の中に「笑い般若」があった。トゥットゥはこのページに釘付けとなった。なんといっても子どもの生首を持っている。

「こどもがいるねー。」

その声は恐怖に震えていた。よく見ると般若なので角も牙もある。私はしめたと思った。

「トゥットゥ、これ鬼だよ! 鬼が子どもの頭をカプっと食べたんだよ。『早く寝ない子は誰だ~』ってやってくるんだよ。」

これ以降、トゥットゥの中の鬼は早く寝ない子どもの頭を食べにやってくるということになった。

「おにがドンドンドンする」
「『はやくねないこはだれだ~』(しゃがれ声をまねする)」
「おにがカプっとする」

鬼を語るときには、このフレーズが常套句となった。

ただ節分に保育園にきた鬼は子どもと握手をするフレンドリーな鬼だ。この違いをどう説明するか。昼間の鬼はいい鬼で、夜の鬼は怖い鬼と説明した。ただ最近は朝ぐずってオムツを履かずに尻を出したままで泣き喚いていることがあるので、ジェイジェイが「朝鬼」なるものを登場させて、お尻をカプっとするという設定にしていた。

保育園の連絡帳に「トゥットゥちゃんは『鬼が島』について一生懸命保育士に聞いていました。」と書いてあったときは笑った。どんだけ鬼に興味があるんだ(笑)。実は「桃太郎」はまだうちでは読んだことなく、保育園で読んでもらってきっと鬼の住んでいるところということで興味を持ったのだろうと想像した。子どもってすごい。どんどん鬼のイメージが明確になっているようである。





保育園には図書コーナーがあって一人2冊ずつ1週間借りられることになっている。今まではあまり興味を示さなかったのが、本が何かがわかるようになったのか、12月にそこに置いてあったクリスマスツリーが無くなったことで、とたんにそのコーナーに注目するようになったのか、クリスマスが明けたあたりから立ち寄るようになってきた。とにかくアンパンマンとトーマスが好きで、それ関連の本ばかり借りていた。

ところがである。アンパンマン、トーマス本を探していると、ふとおばけの本を見つけた。




本をパラパラ見ると、まさにトゥットゥのように寝ない子がおばけのようになって、おばけに夜の世界に連れ去られてしまうというものだった。絵は可愛い切り絵なのだが、設定が十分怖い。トゥットゥを怖がらせるには丁度よい本だった。しかし鬼とおばけダブルで脅すのはどうなんだろうとトゥットゥに勧めるのを躊躇していたら、本人がその本を手にとった。

「おばけ」

おお、おまえはおばけがわかるのか。私はまだ教えたことがなかったが、妖怪ウォッチの歌も歌うくらいだから、きっとおばけを保育園の友達なり先生に教えてもらっているのだろう。読むかときくと、読むというので、最初から読んでやった。

「おばけ、かりる。」

怖いものみたさなのだろうか。家で鬼が出るよと脅してもベランダに見に行こうとする(ただし「とーたんが」「かーしゃんが」と私達に行かせる)。整骨院に行っても「こわい、こわい見る。」と言って積極的に北斎を見ようとする。そしておばけ。いいのか? トゥットゥ。

案の定、自分で自分の首を絞めたようた。私がようやく明るくなってきた17時半頃保育園に迎えに行くものの、図書コーナーに立ち寄ったり、園庭の滑り台で遊んでいると、日が傾き始める。すると

「おばけのじかん」

と行って私にしがみついてくるようになった。

「そうだよ、寄り道する子はおばけが夜の空に連れていくんだよ!」

と私も調子に乗って脅す。

トゥットゥの世界には鬼とおばけが存在することになったのだ。ほんの1ヵ月前まではいなかったのに。さてこれからどうやってこれらを肉付けしていこうか。「ママはテンパリスト」のように大人の想像力と演技力が試されるぞと思い気を引き締めるのであった。





トゥットゥへの気付き
様子
保育園での「こどもの王様」遊びによく立候補するらしい。王様になった子どもは子供たちの真ん中でお辞儀してぐるぐる回るというもの。そういう子(オンステージ好きな子=目立ちたがり屋)なのだろうか。うちの家族の血にはない…。
体調
減らした下剤4滴とマッサージ、たまに便が詰まる日あり。翌日5滴へ。
食事
ご飯をあまり食べなくなった。あんなに好きだったのに。おかずを食べるかと言うと、これもまた微妙。ジェイジェイは「やせるからいいじゃん」って。常に成長曲線の「肥満」「やや肥満」にいるトゥットゥです。