メールを送信して携帯電話を机に置いて再び仕事に取り掛かろうとするやいなや携帯が鳴った。今日はえらく日中に連絡の入る日だな。のんきにそんなことを思った。ところがその音はメールではない。電話だ。日中の仕事中に私に電話をよこす人…。保育園しかない。トゥットゥに何かあったのだ。急いで電話を取ると画面には電話帳に登録した「保育園」の字がひらひらと舞っていた。
「トゥットゥちゃんのお母さんですか?私、○○保育園の看護師の△△です。トゥットゥちゃんのお熱が39度5分ありまして、お迎えにきていただきたいのです。」 ついにきたーーーー。熱が出たための早退お迎え。今仕掛かりの仕事は今日中が締め切りだ。これを終わらせるにはあと15分。「わかりました。今仕掛かりの仕事が限のよいところで終えてから迎えに行きます。3時半くらいになります。」「わかりました。」と勝手に決めてしまった後で会社の上司に了解を得た。実は上司も同じ4月に職場復帰したばかりの3歳と1歳の子を持つワーキングマザーだ。理解は早かった。快く送り出してくれた。
それにしてもヤマナちゃんに「元気に保育園行ったよ」とメールを打ったあとに、保育園から高熱でお迎えに来てくださいと連絡があるとは…。ヤマナちゃんは何か勘がいいのかもしれない。
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仕事を終えると会社をダッシュで出て電車に飛び乗った。そこまでは「この仕事を終わらなければ!」と「トゥットゥを早く迎えに行かなければ!」以外は何も考えていなかった。電車に乗ってようやく他のことが考えられるようになった。「そういえば、明日の平泉行きはどうするんだ???」
サチ母の念願叶う喜び、亡くなった自分の両親と祖父母の墓前で孫が出来たことを報告できること、お墓のお世話をしてくれている叔母家族についに本物のトゥットゥを見せてあげられること、その喜びは十分感じていた。その上、サチ母から電話で叔母家族一同がトゥットゥという小さな来客を本当に楽しみに待っていることを予め告げられていたため、ここでいいようのないプレッシャーが襲ってきた。
どうする。熱が下がらなかったら夏に延期か? 仮に熱が下がっても体調不良のトゥットゥを連れていくのか? その判断が母親の私にのしかかった。普通なら延期させてくださいと突っぱねることもできるのだが、今回ばかりはトゥットゥを連れ出す重みが違う。わからない。こればっかりはジェイジェイとサチ母に相談して決めよう。まずはトゥットゥの病気だ。高熱が出る原因はなにか? 急いでiPhoneの「育育児典」を読んだ。
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トゥットゥを迎えに行くと事務室側の保健室で看護師の先生に抱かれたトゥットゥがいた。一瞬彼女と目があった。すぐに「お母さんは急いで帰り支度を。」と言われ、トゥットゥを尻目に荷物をまとめるために1歳児教室に向かった。教室に入るとすぐに保育士の先生から状況説明があった。「トゥットゥちゃん、午前中はいつもなら活発に動き回るのに、仰向けになってゴロゴロしていたんです。なんとなく元気がないなと思っていたんですが、お昼ご飯は全部食べたので大丈夫かなと判断しました。ところがお昼寝明けに真っ赤な顔をしているので熱を測ると39度5分ありまして。」 先生に帰り支度を手伝ってもらいお礼を言って保健室へ戻った。
トゥットゥは泣いていた。看護師の先生は「さっきまでは大人しく待っていたんですよ。でもお母さんのお顔が見えたから気持ちが緩んじゃったんでしょうね。」と言って抱いていたトゥットゥを私に手渡してくれた。トゥットゥの額には小さな冷えピタが貼ってあった。触るとすっかりぬるくなっていた。彼女は火照る体でずっと待っていたのだ。申し訳なく思った。「今、園ではアデノウイルスと手足口病が流行っています。病院にかかる際はその旨をお伝えください。」と看護師の先生に言われ、お礼を言って保育園を後にした。
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一度家に帰り、ストローマグにお茶を用意し、トゥットゥお気に入りの玩具と彼女を扇ぐための団扇を持って、すぐ小児科に向かった。おそらく小児科の待合室で長いこと待つだろうと予想したからだ。案の定4時ごろ小児科に行くと1時間待って診察となった。その間彼女はずっと愚図っていた。仕方ない。高熱でしんどいのだ。
診察室に呼ばれると症状を話した。保育園で流行っている病気の話もした。そして一通りの診察、聴診器、喉、耳。先ほど電車の中で「育育児典」を読んだため、高熱の原因や対処法はある程度理解した。耳を見るのはおそらく中耳炎の疑いを調べたのだろう。私が「こんなに高熱が出るのは初めてです。」と言うと、少し考えて話始めた。ウイルス性の風邪(アデノウイルス含む)、もしくは突発性発疹、もしくは川崎病。この3つが疑わしい。
・アデノウイルスの場合、まともにくらうと1週間くらい熱が長引く場合もある。子供の熱の許容期間は4日間。5日目の朝になっても下がらない場合は病院に来るように言われる。
・突発性発疹の場合、熱が出始めて4日くらいして手足に発疹が出る。発疹が出ないと突発性発疹とは判断できない。発疹が出たら病院に来るように言われる。
この病気が怖いのは高熱でひきつけ(白目をむいて体をつっぱらせガクンガクンとするけいれんがあり意識を失う)を起こすこと。はじめてということなのでひきつけを起こしたら救急車を呼んで救急病院へ行くように言われる。
・川崎病の場合、これが一番やっかい。高熱の最中に目が赤くなったり、唇が真っ赤になったり、手足に発疹ができたり、手足がむくんだりしたら、すぐに休日外来ある病院にかかるように言われる。だいたい育育辞典で予習をしておいたので、この3つの病気は抑えていたため落ち着いて聞くことができた。特に突発性発疹は一昨日の水曜日にこの病院で会ったYちゃんがそうだと話を聞いていたので警戒していたのだった。育育辞典によるとヘルペスウイルス6型と7型の二種類により引き起こされる病気で、それぞれ1回ずつ、つまり人生で2回ヘルペスウイルスで高熱が出たらおしまい、私たちもそうであるように普通のヘルペスウイルスキャリアということになるらしい。Yちゃんはその2回をこの4月に体験してしまったのだ。まさかトゥットゥも…。その可能性はある。
そして平泉行きのことも聞いてみたが、「明日の朝熱が下がるとは断言できません。仮に熱が下がったとしても、新しい環境はストレスですよね。赤ちゃんにとっては迷惑以外のなにものでもない。医者としては当然行くことはお勧めできません。」と返答があった。当たり前といえば当たり前のお答え。平泉行きは諦めるか…。ここでは7割くらい諦めるほうに気持ちが傾いた。
病院で処方箋と会計を待っていると、0歳児クラスで仲良くしてたR君とR君お母さんとばったりと出会う。あちらは今日予防接種だったが母子手帳を持ってくるのを忘れて、追って持ってきたところだった。薬を処方してもらった後に外で風に吹かれながら少しだけ立ち話。トゥットゥはR君を見ると少しだけ元気になったようだ。よかった。
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さてトゥットゥは熱があるからぐったりしているのかというと、家ではトゥットゥ語を話すいつものトゥットゥだった。意外と元気そうなのである。先ほどの平泉行きを諦める気持ちが5割くらいに下がってきた。そうこうするとジェイジェイ早めの帰宅。予めメールで相談していたが、結論は出ず。やはり今回の平泉行きのキーマンはサチ母なのである。
サチ母に電話をかけると、驚いた声を上げた。そしてすぐに落胆して「それはトゥットゥの大事をとるしかない。」と言った。私たち夫婦もサチ母の平泉行きにかける想いを知っているだけに、何かよいアイデアはないかと考えた。
・サチ母だけ行く
・サチ母とジェイジェイが行く
・サチ母とジェイジェイが先に行き、トゥットゥの熱が下がったら
追って私とトゥットゥが平泉に行く。
・三人とも行かない
しかしどれも決まらない。病院の話を総合すると高熱さえが下がれば大変な状況は抜けたと考えてもよい。もちろん病み上がりではあるが。側にいるジェイジェイと電話でサチ母と相談した結果、朝のトゥットゥの様子を見てから決めようということになった。
さて平泉にいけるのか!? トゥットゥの熱よ、下がってくれ!
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トッゥトゥへの気付き
様子
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意外と元気に遊んでいる…と思ったが17時半に寝落ち。そのまま寝続ける。高熱で汗だくだくとなっていたが、22時頃額を触ると熱はずいぶん下がっていた。37度4分。高熱でも寝入ってしまい熱を下げてしまう(免疫の戦いの後?)子供の体力ってすごいな。
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体調
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絶不調。風邪っぴきなところに保育園で流行っているアデノウイルスをもらってしまったと思うのだが…。
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食事
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大好きな「極プリン」をコンビニで買ってあげるも食欲がないようで3口食べたら手で払いのけた。
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