最近は「はあ、お母さんですか…。」という表情には変わりないのだが、先生の膝の上で本を読んでいたりすると、少しだけ眉をひそめることがある。せっかく迎えにきたのに…。どうも「今、先生といいところなの!」という非難がこめられているようだ。そして帰りは保育園の玄関あたりでトゥットゥ語でわめくことが多くなった。玄関に並べてある乗用玩具(手押し車の玩具)が気になるらしい。連絡帳を見ると歩行訓練に使っているらしくお気に入りのようだ。なるほど。
このように帰りの場面と先生との連絡帳でトゥットゥの保育園の様子を想像していたが、とうとう直接先生に話を聞ける日がやってきた。今日は初めて保育園の懇談会があった。初めてということもあって、やはり参加したほうがいいだろうという判断で、午後から会社を休んで参加した。5分前に会場に行くと一番乗りで、そのうちばらばらと18人のクラスメイトのうち、11人のお母さんが集まってきた。
それぞれの子の写真が貼ってある大きな名札を胸につけて懇談会はスタートした。まず園長先生の挨拶、保育士を始め、看護師など関わるスタッフの挨拶、そしてクラスの運営方針の説明。ここで名指しで子供たちの具体的な行動を織り込みながら日常の様子が紹介された。やはり1歳児は月齢の違いで成長度合いがずいぶん違うのだ。ファーストクォーター(4~6月)生まれのお兄ちゃんたちの好奇心、冒険心、そして他の子に対する思いやりの心。2月生まれのトゥットゥなんぞはまだ「虫」レベルだと思った。しかし私は焦ることはなく、彼女もあと少ししたらこれらのお兄ちゃんのように興味が広がり、遊びを工夫し、他の子を思いやることができるようになるのだと思うと楽しみに思えた。
次に参加した父母からわが子自慢という自己紹介があった。ここではジャッキーという個人ではなく、トゥットゥの母として振舞わなければならないのである。母親11名のうち私を含む4名は1歳児クラスデビュー組で、7名は0歳児クラスからの先輩お母さんたちであった。しかもだいたいが第二子、第三子の末っ子男の子で、子育てのベテランでもあった。
私はトゥットゥが2月生まれで発達遅めということもあり、1歳児クラスの環境として先生のお膝を独占できるため、私たち夫婦にはない甘えん坊キャラだと紹介した。また待望の初孫ということで甘やかされるせいか、家での振る舞いはプリンセスのようだと付け加えた。プリンセス・トゥットゥにかかるとお父さんもおばあちゃんも皆、召使や使用人となってしまう。私はというと、唯一召使にはならない、19世紀イギリスでいうところの「家庭教師(ガヴァネス)」のような役回りだと思った。母親ってこれでいいのかね…。
そんなことを自己紹介のあとに考えていたら、先輩お母さんたちの我が子自慢を聞くことになった。そこで驚いたこと。皆一様にスウィートな顔をしながら我が子を語るのだ。男の子はお母さんにとって小さな恋人だとは聞いていたが、それは本当なのだろうか。懇談会が終わって子供たちを向かえに教室に行くとそれが本当であることがすぐにわかった。
懇談会で見事な発達ぷりを紹介されていたファーストクォーター生まれのお兄ちゃんたちがお母さんの顔を見るなり、泣き顔になりわれ先に駆け寄っていったのだ。お兄ちゃんは皆お母さんに抱っこされ、その胸に顔をうずめ、時折顔を見上げて、ぐずぐずと甘えている。うわーーー、なんだこりゃ。私は赤面してしまって直視できなかった。確かに可愛い。男の子、可愛い。脳天がとろける可愛さだ。すさまじい破壊力である。母親もキリっとした態度を保てるはずがない。
そしてトゥットゥはというと、お兄ちゃんたちが泣くから混乱し、あちこち見て一緒に泣くという幼さを披露。私の顔を見ると「は、なーんだ。」という具合ですぐに泣き止んだ。そして抱っこされると唯一大人に通じる指示語「こっち」と指差しで一言。どうやらおやつの時間で自分を席に着かせて食べさせろと指示しているようだ。…さすがプリンセス・トゥットゥ。
トゥットゥはもちろん可愛い。だが彼女が女の子である限り、私は彼女を育てることで同じく女性性の私の人生を生き直しているような錯覚に陥る。彼女に愛情を注ぎ込むことは、自分を愛することに置き換わる。すると自分に肯定感がないと歪んだ愛情になってしまうのではないか。その点男の子はまさに「そんなの関係ねー。はい、オッパッピー。(小島よしお)」であり、ある意味無責任に、いや、語弊があるか…、自分とは切り離して愛情を注ぎ込むことができるのではないだろうか。
母親の男の子の可愛がり方を見て、いろいろ考えてしまったが、結局トゥットゥはトゥットゥであり、私ではないことは確かだ。いないいないばあをして笑う彼女、私の顔を触って笑う彼女、夜寝室で目を覚ました時に目が合うと笑う彼女、そういうトゥットゥを可愛いと思うだけで幸せな気持ちになる。それでいいのだ。愛するというのは幸せな気持ちになることである。
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トゥットゥへの気付き
様子
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保育園の乗用玩具の手押し訓練おかげか、二三歩、歩こうとする様子が家でも伺えた。
また食事中にヘッドバンギングをするという遊びを編み出し、食べたら頭を上下に振って笑うという奇行を繰り返している。何が楽しいのでしょうか…。 |
体調
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うんちも絶好調。体調も絶好調。
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食事
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最近、朝自分ひとりで食べてくれるからと、トーストが続いている。ジャムトースト、ハチミツトースト。一枚ペロリと食べてしまう。ご立派。
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