土曜日のジェイジェイはというと、午前中はピロリ除菌の結果を聞きに病院に出かけ、その足で整体、昼食、夕食の買出しと周り、15時ごろに帰ってきた。なかなか忙しい男である。このような事情から彼はトゥットゥと遊ぶことができなかったため、夕飯当番の日にも関わらず、気を遣ってトゥットゥと公園に遊びに行ってくると言ってくれた。私はこの日は朝からトゥットゥを小児科に連れていけるか、登園証明書は出るか緊張していたため申し出はありがたかった。
二人は長い間帰ってこなかった。きっと電車の見える公園で「でしゃー」と指差しながら目をきらきらさせて電車を眺めているに違いない。ところが帰ってきたジェイジェイに抱っこされたトゥットゥは涙目だった。
「それがさー、ドラッグストアの前を通ったら突然『でしゃー、でしゃー』って叫び始めて。てっきりドラッグストアのトーマスガチャをやれってことだろうと思って、『お父さんはガチャはやらないよ』って言って強引に抱っこして連れ帰ってきたんだ。そうしたら泣き始めちゃってさー。」
ドラッグストアのトーマスのガチャ。病気のせいで保育園に行けず家で療養しているトゥットゥが暇をもてあますことは目に見えていた。サチ母が出社する私に代わり面倒を見に来てくれた火曜、水曜、トゥットゥは自分の具合が悪いのを差し置いて、玄関ドアを指さし、「こっち、こっちー」と言ったらしい。もちろんサチ母は可愛い孫の言うこと、少しくらいならと、お散歩に連れ出した。その時立ち寄ったのがドラッグストアだった。
そこにはガチャが数台あった。トゥットゥは私が時々そこのフチ子さんガチャをすることを知っていた。確かに彼女はじっと見ていた。いつかやってみたかったのだろう。サチ母にやりたいと喃語で訴えた。トゥットゥは電車が好きだからというサチ母の判断でトーマスのガチャをすることになった。トゥットゥはコインを自分で入れたらしい。サチ母から100円玉をもらって1枚、2枚。ガチャのレバーは固く、さすがに回せないのでサチ母が回した。トゥットゥはカプセルが出てくるところを覗き込んだそうだ。そんなことまで知ってるのか…!滅多なことはできないと思った。
それが病気中の2日連続行われた。トゥットゥはすっかりドラッグストアではガチャができるものと思ったに違いない。それがジェイジェイの「でしゃーーー」事件に繋がっていくのだった。
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家に帰ってくると涙目で不機嫌そうだったトゥットゥは、部屋に入るなりテーブルの上に無造作に置かれていたトーマスが目に入った。そこからである。彼女のスイッチが入った。おばあちゃんとのガチャの記憶が呼び戻されたのだろう。
「ぎゃーーー、でしゃーーー」
ジェイジェイの足元までやってきて抱っこをせがむように両手をあげて「でしゃー、でしゃー」、抱っこをすれば玄関を指差して「こっちー、こっちー」と泣き続けた。
「泣き止むまで待つべき?」
ジェイジェイは抱っこをしてやったものの途方にくれながら私に聞いた。私の経験上、トゥットゥは時間がたてば疲れて寝るということはあったが、今回はお昼寝直後の出来事なので寝ることは期待できなかった。となると放っておいて忘れるということは今までなかった。執拗に要求が通るまで粘り強く泣き続けるのだ。
「ガチャをやりにドラッグストアにもう一度行くか…」
ジェイジェイは諦め気味に言った。確かにガチャなんて1回200円、我々大人の財力からすればたいしたものではない。しかしトゥットゥにドラッグストアに行けばガチャが出来るとは覚えさせたくはない。それはジェイジェイも同じだった。だから彼は「お父さんはガチャはやらないよ」と彼女に言い聞かせたのだ。しかしサチ母が2日連続トゥットゥのガチャ要望に応えている。今後サチ母の行為は私たちの躾上禁止すべきか。私は咄嗟に考えた。
サチ母は純粋に孫が喜ぶ顔が見たくてやっている。トゥットゥが欲しがる高価なもの(今思いつくのは3000円以上?)をバカスカ買い与えるのはどうかと思うが、たった1回200円。しかも孫に会えるのは今のところ二週間に一度くらいのペースだ。トゥットゥへの躾よりもサチ母への親孝行と考えたほうが私にとっては遥かに価値は高い。躾やけじめは私たちが担えばよい。おばあちゃんは甘える人でいいではないか。
「トゥットゥ。ガチャはおばあちゃんが来た特別な日だけよ。普通の日はやらないの。」
やっぱりトゥットゥは泣いたままだった。
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ふっと思い出したことがあった。ガチャ云々の前に彼女が同じ場所で「でしゃーーー」と叫んだことがあった。それはその場所で振り返ると電車が見えるのだ。彼女のシャウトは「電車を見せて。」の意味かもしれなかった。振り返ると電車が見える別の場所でも立ち止まらずに帰ろうとするとベビーカーの上で身をひねって振り返っては「でしゃーーー」と叫んだこともあった。もしかするとそれかもしれない。
ジェイジェイにトーマスガチャはやらなくていい。とりあえず電車が見える路地まで出てトゥットゥに電車を見せてあげてくれとお願いした。ジェイジェイはその通りにして帰ってきた。彼女の機嫌はすっかり直っていた。
「他のことで気が紛らわすって技があったね!」
ジェイジェイは嬉しそうに言った。私は母親としてお手柄といったところか。トゥットゥの本当の目的はトーマスガチャだったが、本物の電車を見ることで紛れたかもしれない。私が思い出したようにトゥットゥの本当の目的は振り返って電車を見ることで、その場所で本物の電車を見て満足したのかもしれない。
でもなんとなく思うのだ。トゥットゥは私たちが伝えたかった意味を理解したと。お父さんとお母さんはガチャはやらない。だから泣き止んで帰ってきた。彼女は要求を引っ込めるところを探っていたのではないか。私たち大人でも抜いた刀を納めるのに苦労したことはないか。子供はあんな風に見えて賢い。これからも真摯に向かい合おうと思った。
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トゥットゥへの気付き
様子
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金曜日に退屈しのぎで出かけた街で、サマンサタバサのバーゲンワゴンの前から動かなくなった。コラボ商品のミニーちゃんが気に入り、握り締めたままだった。仕方なく買ってやった。その後トーマス事件があろうとは。先が思いやられる。
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体調
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少し咳込むこともあるが、ほとんど病気になる前と変わらず。うんちもなぜか絶好調。麦茶にごぼう茶をブレンド。そのせいか?
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食事
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味噌汁が大好きで、必ず指差しで「んっ」と言って指名。味噌汁、味噌汁、味噌汁、ごはん、味噌汁、味噌汁、おかず、こんなペース。
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