ところが世界はうまく回っているもので(?)、こういった日に限って会社で同じチームの同僚が高熱で休んだ。もちろん夫や娘が家にいないことなど会社に言う必要もなく、そのカバーを他のメンバーに押し付け、保育園に娘を迎えに行くふりをして早く帰ることもできたのだが、性格なのか残業を快諾してしまった。
「今日と明日は独身なんですー。」
久々の残業。まあこれもよいではないか。夫や娘など他人のことはいっさい考えることのない時間、自分だけの時間、自分のための時間、すなわち仕事は贅沢な時間なのだと思った。結果、木、金と2日連続して21時を回って電車に乗った。
★
8月16日(土)は泊まりの支度をして千葉のサチ母の家に向かった。盆の明けということで、最寄駅で降りた足で、この日車でやってきた義妹のエミィさん夫婦とジェイジェイと一緒にお墓参りへ。送り火を焚いて義父とお別れをしてきた。トゥットゥはお昼寝中ということでサチ母とともにお留守番組だった。
16時過ぎにサチ母の家に着くと昼寝から起きたと思われるトゥットゥを抱いたサチ母が玄関で待っていてくれた。トゥットゥとは実に約3日ぶり(木、金、土)となる母子対面。どんな顔をするのだろう。保育園に迎えに行くと、トゥットゥはいつも私の顔を確認するなりニコーっと笑って、できうる限りのスピードで寄ってきて抱っこをせがむ。そんな風になるのかしら。
想像しながらトゥットゥの前に行った。サチ母が「ほら、お母さん来たよ。」と声をかけた。私はトゥットゥの顔を覗き込んだ。「トゥットゥ、いい子にしてた~?」 しかし彼女は顔を横に振って目を逸らした。ん?もう一回トゥットゥの顔を覗き込んだ。やはり彼女は顔を振って目を逸らした。決して私と目を合わせようとはしなかった。ん?私を忘れているのか??
「ほら、私もしばらくぶりに東京の家に遊びに行ったり、保育園に迎えに行ったりすると、トゥットゥってこんな顔するわよ。思い出している最中なのよ。」
とサチ母は言った。確かにトゥットゥは用心深いところがある。保育園の門を開閉するボランティアのおじいちゃんに「さようなら」と手を振るのに3ヶ月かかった。それもしばらくは目を合わせず。8月に入ってようやく目をあわして手を振るようになった。まだ笑顔はないが。そしてサチ母のしばらくぶりはだいたい2週間である。2週間で不審がるのは彼女の用心深さからくるということか。
さらにたった3日で実母さえも不審に思うのであれば、今、仮にトゥットゥを養子に出しても、産んで今まで育てた私などどうでもよいということになる。産みの親より育ての親、やはり子供にとっては今を生き抜くことが大切なんだなあとやるせない思いがした。動物界の厳しい生存競争も人間だからといって例外ではないのだな。
家に入ってからサチ母が私たちのためにお茶の準備をしようと、トゥットゥを床に下ろそうとすると、トゥットゥは嫌がった。そこで私が「私が抱っこしましょう。」と手を伸ばすとトゥットゥは嫌がった。そして今日お昼頃から先行して滞在しているエミィさんが手を伸ばすと素直に抱っこされた。むむむ。母親形無しである。するとエミィさんが言った。
「きっと拗ねてるのよ。今まで私を放っておいてって。」
そうか? そうかなあ? そんな高等生物になっているか、トゥットゥ・・・? 30分すると私がその場になじんできたようで、トゥットゥもすんなり私に抱っこされたり、目を見て笑うようになってきた。何事もなかったように今までの母子の関係に戻った。
★
長い盆休みが終わりトゥットゥを保育園に送っていった18日(月)の朝。いつものように彼女を1歳児クラスの匍匐用サークルの中に降ろすと不安そうな顔をした。いままで4泊5日でサチ母にべったりだったから無理もない。少し可哀想な気もしたが、やさしい保育士たちに囲まれてまた楽しく過ごすことを願いその場を後にした。夕方迎えに行くと大きな笑顔だった。連絡帳には「トゥットゥちゃん絶好調でおおはしゃぎでした!」と書いてあった。なんだ心配することなかった。きっとお盆休みで成長したに違いない。そろそろ笑顔で保育園に行けるようになるだろうかと思った。トゥットゥはいつも朝預けるとき表情がなくなるのが気がかりだったのだ。
今日の朝、保育園に送っていき保育士にトゥットゥを預けると、彼女の顔から表情が消えた。昨日のお迎え時の笑顔は嘘のようだった。保育士は「はい、お母さんバイバイね~。お仕事がんばってね~ってバイバイね~。」とトゥットゥに声をかけたが、彼女は一度も私の目を見ようとしなかった。
そうか!これか!!
エミィさんの発言を思い出した。トゥットゥは4月からずっとこうなのである。バイバイができるのに朝私が保育園に預けに行って別れるときに絶対にバイバイしようとしない。目を合わせようとすると目を逸らすのである。しかし目線の先にはおもちゃがあったり、お友達がいたことから、私はてっきり興味が別のものに移っているからだと思っていた。保育士さんも「あらあら」と私といっしょに苦笑する毎日だった。
違う。バイバイをしないのは興味が別に移ったからではなく、明らかに拗ねているのだ。無視をすることで抗議しているのだ。
「え、お別れするの? なんで? あ、そうなの?そうなんだ。ふうん…。」
小さな頭で一生懸命状況を理解する。どうあがいても結局は母親のいない状況を受け入れなければならないことを毎日の体験から知っている。だから諦める。しかし目の前には本来であればずっと構ってくれるはずの母親がにこやかに手を振っている。手なんか振れるわけないでしょ。ああ、不安。お母さん、わかってんの? こんなことがぐるぐると頭に渦巻いていて、あのような態度になるのだろう。
それをジェイジェイに言うと「俺に似てるね。」と一言。私はてっきり寂しかったり不安なら泣くという行動に出ると思っていた。無視して抗議するとは父娘揃ってまったく…早く教えてください! 家にいる間はせめてもトゥットゥとべったり一緒にいようと思った。
★
トゥットゥへの気付き
様子
|
ここ二日、夕方は大変機嫌がよく、ゲラゲラ笑っている。
|
体調
|
うんち、毎日記録、急にストップ。サチ母のごはんがよかったか。
|
食事
|
最近は私がスプーンで料理を口に持って行こうなら口を閉じてそっぽを向く。単純にその料理が食べたくないのかと思ったら、自分のスプーンではもりもり食べる。1歳半、そういうお年頃(何でも自分でやりたい時期)なのだ。
|