2014年10月11日土曜日

ジスロマックの戦い

先週からトゥットゥの中耳炎のそもそもの原因、鼻づまりに対処するため、保育園帰りに鼻水吸いに耳鼻科に通っていると、10月7日(火)に耳鼻科の先生があることに気付いた。

「扁桃腺が腫れているわ。白いポツポツがついている。扁桃炎ね。鼻水が収まった代わりに喉に来たか…。熱が出るかもね。要注意ね。」

耳やら鼻やらに器具をつっこまれる耳鼻科に通うようになって以来、トゥットゥは診察台に座る時には大声で泣き叫び、遡上する鮭のように腕の中を飛び跳ね、先生や看護師さんに苦笑交じりで「強い子(強情っぱり)だからね」と言われていた。確かに同じ医院で他の子の泣き叫ぶ様子を見たが、もう少し観念した泣き方だったが、トゥットゥの場合はどうにかして逃げ出してやろうとする執念が見られた。天晴れ。

こんな元気(?)なトゥットゥなのだから、今すぐどうなるものではないが、熱が出るかもしれないから、予防のため薬を出しておくと言われた。保育園から20分もかかるしんどい耳鼻科通いではあったが、保育園帰りにがんばって通っておいてよかったと思った。





薬を飲んでいるから大丈夫。そう信じていたが、やはり耳鼻科の先生の勘は的中した。9日(木)の朝、朝ごはんを飲み物以外は一切口にしなかった。ああ、喉が痛いんだ。熱は37度5分。今までの経験からもっと熱が上がる気配があった。とうとうきたか。私は観念した。会社に保育園に休みの連絡を入れた。

扁桃炎以外のことも考えられるのでまずは小児科へ。

「まぎれもなく扁桃炎です。」

今までの経緯を話し、お薬手帳を見せて、耳鼻科の指示に従うように言われた。なぜなら中耳炎の対処も兼ねての薬の処方になっているようで、そちらの治療に専念したほうがよいという判断からだった。また出されている抗生剤は飲みすぎるのもよくないとのことで、小児科では追加処方はしないと言われた。

昼過ぎから熱が38度5分まで上がった。熱さましを飲ましたものの、トゥットゥは眠りが浅く何度も起きては泣いて私を探した。その度に側に居て抱いてやった。10分ごとにこの繰り返し。覚醒しても火照る体が不安なようで、常に私の抱っこを求めた。この日は朝病院に連れて行った以外何も出来ず。いままでも病気の時ってこうだっけ? 思い出してみたが初めてだった。トゥットゥは不安を不安と表現できるようになったということなのだろう。夕飯も用意できず、ジェイジェイには外で食べてきてもらった。

その日の晩は風呂に入れず、20時には就寝させた。夕方に熱さましは飲ましたものの、1時間おきくらいに目を覚まして泣いた。その度にお茶やジュースを飲ませた。深夜2時に飲ませた熱さましが効いたのかそこからはすーっと寝た。熱も引いたようだった。





10日(金)。天気がよかった。トゥットゥには芯熱のようなものはあったが、比較的元気そうで熱も36度7分くらいであった。保育園に行かすかどうかぎりぎりの判断だった。それにこの日は私が会社で携わっている新人教育の最後の成果発表、外部に向けたプレゼンがあり、どうしても出社したかった。しかしサチ母はこの日に限って先約があり頼れなかった。仕事を休めないジェイジェイに相談すると、ぎりぎりまで様子を見て行けるようなら遅刻をして会社に行けばいいとアドバイスをもらった。

そのつもりで準備した。トゥットゥは保育園へ。私は会社へ。デッドラインの8時半。トゥットゥの熱を測った。37度6分。終わった…。今日も一日休みだ。

諦めがつくと早いもので、すぐにトゥットゥを耳鼻科に連れていった。もらっていた扁桃腺用の薬が切れるからだ。早速行くと先生は頭を抱えた。薬を飲んでいたのに高熱が出たということは、その抗生剤は扁桃腺にはあまり効かなかったということだからだ。中耳炎のこともあるので判断が難しそうだったが、熱を下げることが最優先ということで扁桃腺のみによく効く薬を処方してくれた。

「大人でも扁桃腺にはこれが一番よく効くって言う人が多いわ。でも飲みすぎると効かなくなる。薬とは上手に付き合わないとね。」

ジスロマック。

それが薬の名前だ。朝だけ1回。これを子供の場合3日間続けると1週間効くという薬だと説明を受けた。大人の場合は1回で1週間の効き目。なにやらその説明にぞくぞく寒気がした。トゥットゥをそんな強烈な抗生剤漬けにするのか? 生理的に嫌だと思った。しかしその日は引き続きトゥットゥは高熱を出して、抱っこ魔となった。あまりの束縛振りに

「トゥットゥ、お母さんを少しだけ放してくれないかな。そういえば今日お母さんの誕生日なんだ。ちょっと放して祝福してくれないかな。」

そういって自分の誕生日であることを思い出した。ふと時計を見た。15時27分。私の生まれた時間だった。神様っているんだなと思った。トゥットゥは一日手を放してくれなかったが。





11日(土)。ジスロマックを飲ます朝がやってきた。その薬を薬局で調合してもらったとき、薬剤師から言われたことを思い出していた。

「酸味のあるもの、例えばヨーグルトやオレンジジュースなどに混ぜると苦味が増すんです。ですから、お茶や牛乳、プリンに混ぜることをオススメします。」

これを聞いてある意味「終わった…」と思った。なぜならトゥットゥは今まですべてヨーグルトやオレンジジュースに混ぜて薬を飲んできたからだった。牛乳に混ぜたこともあったが、味がまずくなるようで、それ以来拒否である。ゼリーやプリンの食感が苦手でおやつとしても一切食べようとしないため、それらに混ぜることは考えられない。どうやって薬を飲ませよう…。そもそも熱はすっかり下がっていた。飲ます必要があるのか?

私が考え事をしている間。トゥットゥはホットミルクを美味しそうに飲んでいた。目を離しているとしばらくするとゴフッと音がして、見るとトゥットゥが呆然としていた。牛乳がこぼれていた。こぼしたのか? 「こぼしたらダメよ。」と言って拭き掃除をした。すると「ちゃっちゃ」と言うので、次にお茶をやった。飲めば飲むほど「ちゃっちゃ、ちゃっちゃ」と所望するので、どんどん継ぎ足してやった。次の瞬間、ゴフッ音がして、ボハァと口からお茶が吹き出してきた。吐いたのだ。トゥットゥはやはり呆然としていた。さっきのミルクも吐いたのか? ジスロマックを飲ませることに成功したとしても吐かれたらダメではないか。吐いた? もしや扁桃炎から別の風邪になったりしていないか?

薬を飲ませるのを保留にしたまま小児科に連れていった。吐いたのは今まで飲んでいた抗生剤の副作用の可能性もあるし、単に咽ただけかもしれないことだった。また熱は下がったが、喉はまだ腫れているためジスロマックは飲むべきであり、それは心配するような強い薬ではなくポピュラーなものだと言われた。しかし先生は言った。

「お子さん、ジスロマック飲めますかね。」

さすが小児科の先生だった。この4月から風邪の時にはことごとくお世話になっていて、トゥットゥが変な味のする抗生剤を一切飲もうとしないことを知っていた。ジスロマックは苦すぎてトゥットゥには難易度が高いことがすぐにわかったのだ。

「まず飲ませてください。飲ませられないようなら、他の薬を処方しますので、また病院に来てください。」





家に帰った。ジスロマックと相性のよい飲み物に「ウーロン茶」と書いてあった。もともと苦味のあるウーロン茶に混ぜるのがよいと私は判断した。ジスロマックを混ぜた。みるみる200mlのお茶が真っ白になった。少し飲んでみた。少し苦い。仮に味が我慢できても、ビジュアル的にもうダメでしょー。案の定、食べ物を目で見て判断するようになったトゥットゥは手をつけようともしなかった。口元に持っていくと手で払いのけて拒否をした。ジスロマック一袋無駄にした…。

二袋目。トゥットゥの好きな牛乳に混ぜてみることにした。100mlの牛乳に混ぜる。ビジュアルは問題なし。味見をしてみると少し苦いが牛乳のまろやかさで相殺されるような気がした。しかし変な味の牛乳には変わりなく、それを飲ませて母親不審になられるのも嫌なので、説得することにした。

「この牛乳にはお薬が入っています。トゥットゥの熱でしんどいのが治ります。すこし苦いけどがんばって飲んでね。」

トゥットゥは殊勝に聞いていた。さじで口元に持っていった。最初は嫌がって首を振っていたが、粘り強く説得をすると、口に入れてくれた。イける! 一口、二口、三口。四口目で泣き顔に代わった。嫌だよね。でもがまんして。五口。「ぎゃあああ。いやあああ」と泣き始めた。六口目。泣きながらものすごい勢いで手で払いのけた。私も負けじと押さえつけて飲ませた。七口目。押さえつけようとすると見たこともないような鬼の形相になって叫んだ。

「おかーしゃー、おかーしゃー、おかーしゃーッ!!!」

鬼気迫るとはこのことだった。耳鼻科でのシャウトもすごいが、家でここまで泣く姿は初めて見た。そしてなぜお母さんと泣き叫ぶ??? 手を止めた。もしや…。薬のまざった牛乳を飲んだ。

クッソ苦ッ!!!

薬が底に溜まっていたのだ。トゥットゥの必死さがわかった。まじで毒を飲まされて殺されるとくらい思ったのだろう。もう薬なんて飲まなくていいよ…、心の底から思った。





泣き顔でぐちゃぐちゃになったトゥットゥを連れてすぐに耳鼻科にいった。本日小児科に引き続き二度目の病院。そもそも小児科の先生が「耳鼻科に従うように」と言ったため、薬を再処方してもらうにも耳鼻科のほうがよいと判断したからだ。

「…仕方ないね。熱も下がっているし、もう飲まなくていいよ。」

耳鼻科の先生のお墨付きをもらった。粘り勝ち。トゥットゥ。こうしてジスロマックの戦いはトゥットゥが逃げ切り勝利をしたのだった。





トゥットゥへの気付き
様子
ここまでの抱っこ魔はいままでになかった。本当に看病の2.5日間(木、金、土の午前まで)、何もできなかった。
体調
11日(土)のお昼から復調傾向。
食事
喉が痛いようでご飯を食べず。薬で苦い牛乳を飲ませてから、牛乳もジュースも一切飲まなくなった。すごく疑い深い性格。