2014年10月31日金曜日

「さよなら」は言わないよ

トゥットゥが「バイバイ」の定義を若干間違えていたのは今は昔。お別れしたくないものにシャウトしていたのが懐かしい。今では抜群のタイミングで「バイバイ」が言えるようになった。

「お風呂に行こう。」
「バイバイ。(行くつもりないから、あっち行って)」

うーん。使用方法が合っている…。お母さんは寂しいぞ。

そもそも「バイバイ」がお別れのシーンで使うことだけは、この言葉を覚え始めた頃からの認識が合っていた。5月半ばより保育園に迎えに行くと、「バイバイ」と言って先生とお友達に手が振ることができるようになった。ただ、夕方、保育園の門の開閉をするボランティアのおじいさんにはしばらく警戒感をONにしたままだったが、6月になると無言で下のほうで小さく手を振れるようになった。ああ、この子には打ち解けるためのなんらかの基準があるのだなと理解した。

ところが7月は怒涛の夏風邪到来で保育園にほとんど行けず、8月に入ってようやく調子を戻してきても、ボランティアのおじいさんに対し「あなたは誰?」状態となり、再び目を合わせなくなり、手も振れなくなってしまった。おじいさんに事情を話すと笑って気長に接してくれた。するとトゥットゥも少しずつ心を開き、9月には再び目を合わせることができるようになってきた。おじいさんがバイバイのためにベビーカーにいるトゥットゥに手を伸ばしてきても身構えないようになった。バイバイまであと少し。

しかしまたもや試練はやってきた。10月の運動会明けの扁桃炎からの突発性発疹である。ここでトゥットゥは体調を大きく崩した。そして…その後再びボランティアのおじいさんの顔を見ることはできなくなってしまっていた。

夕方保育園の門の開閉をするボランティアのおじいさん以外にも、もう一人、挨拶をしなければならない人がいた。それは7月くらいから毎朝、横断歩道脇に立っているボランティアのおばあさんである。私は毎朝会うため「おはようございます」と挨拶をしていた。おばあさんもトゥットゥを見ると「まあ、目がくりくりで可愛い!」と言って、名前まで覚えて「トゥットゥちゃん、おはよう」といつも挨拶をしてくれた。その度にベビーカーを止めてトゥットゥをおばあさんに対面させた。

トゥットゥは「おはよう」はまだ言えないため、そこから立ち去るときに「バイバイ」が言えるかどうかが打ち解ける尺度となった。私が「バイバイは?」と促すものの、きちんと目を見てバイバイをするのは難しいようだった。しかし日を追うごとに目をあわせられる時間が長くなってきた。それだけでおばあさんは満足そうに見送ってくれた。

しかし案の定、10月の体調不良後、トゥットゥはおばあさんの顔を見ることはできなくなってしまった。





トゥットゥがベビーカーに乗っておじいさんのところに行くとき、おばあさんのところに行くとき、私は根気強く「バイバイするのよ。」と声をかけた。それまでは彼らが中腰になってバイバイの手を差し伸べると、トゥットゥはフイッと横を向いて手を引っ込める仕草を見せていた。そのうち私の声がけの段階で「あのおじいさんがいる」「あのおばあさんがいる」とわかるようになったのだろう。最初から顔を見ないように横を向き始めた。そしてある日から横を向いてさらに目をつぶり始めた。なんて頑なな!

私が「どうして目をつぶってるの? きちんと挨拶しないと。」と困ったように笑ってトゥットゥの顎や喉元をくすぐると、彼女はにやにや笑って、目をぎゅうっとつぶりなおした。どうもおじいさん、おばあさんを嫌っているわけではないようだ。なんだろう、試しているのだろうか? 彼らがバイバイと言うと彼女は目をつぶったままにやりと笑うこともあった。

そして今日。おばあさんが言った。

「私、今日ここは最後なの。向こうの交差点に立つことになったのよ。だからトゥットゥちゃんとはお別れ。」

相変わらずトゥットゥは目をぎゅうっとつぶって横を見ていた。それを見ておばあさんは笑った。

「最後まで人見知りですいません。」

私は謝った。

「いいのよ。子供はそんなものでしょ。元気でね。」

名残惜しかったが、私も出勤前の忙しい朝である。おばあさんのいる交差点を後にした。

トゥットゥははっとしたようにベビーカーから乗り出して振り返った。おばあさんが手を振っていた。





トゥットゥへの気付き
様子
まだ「おはよう」と挨拶はできないが、自分のクラスの先生を見つけると、黙って両手を広げてペタっとハグをしている姿を見た。甘え方、わかってるな、こいつ…と思った瞬間だった。
体調
少し咳をしている。ジェイジェイの風邪うつったか。
食事
魚が好きで、なんでも食べる。先日はうるめいわしをばりばり食べていた。すごい…。
魚が好きすぎて、グリルから出てくるものを「さかな、さかな」と言って待ちわびるようになった。残念ながらこれはチキンソテーです。