2014年11月21日金曜日

さよなら同僚、さよなら私

私は会社である業務を担当している関係上、人事異動をすぐに見ることができる。今日、その異動連絡に目を通していると、ある人が目に留まった。Kさん。同時期に入社をして長い新人研修を一緒に潜り抜けた女性の同僚、つまり同期だ。彼女が退社する。部長印の押された異動連絡はそれを告げていた。

Kさんについて。大学時代はクイズ研究会に所属していたらしく博識。頭が切れて、アイデアマン。少しひねった面白いことを言う女性。切れ者なのに威圧的なところはなくざっくばらん、中性的な雰囲気でファッションも独特、一匹狼的なところがあった。決して群れないというわけではなく、飲み会やイベントにはマメに参加していたようだし、時々の同期飲みでは相変わらず楽しい話を披露してくれた。私は彼女の産休・育休明けに一緒に仕事した。やはり仕事は的確で優秀だった。セミナーに参加して最新知識を得る好奇心や、難関資格を取得する熱心さも兼ね備えていた。私の結婚ではチームのみんなで祝いを兼ねて新居に遊びにきてくれた。私の産休・育休ではもう使わなくなった子育てグッズお古を譲ってくれた。

こう書くと彼女が魅力的な人間に見えてくるが、正直、新人のころから苦手意識があった。嫌いと言い切るほどでもない、なにかもやっとしたものだった。私と仲の良い同期も大してKさんと会話したこともないにも関わらず「私、あの人嫌い。だってずうずうしいもの」と言った。私はずうずうしさは特に気にならなかった。仲良くなろうとする前向きさやざっくばらんなところがそう映るのかもしれないと思ったくらいだ。しかし何かが苦手だったのかずっと言葉にならなかった。一緒に仕事もした。よき同僚になろうとした。でもダメだった。結果的に「二度と仕事を一緒にしたくない。」とまで思った。

一緒に働いている時、彼女は一度休職したことを教えてくれた。なんでも上司と同僚の女性と反りが合わず、精神的に追い詰められたそうだ。表では「大変だったね。」と同情したが、裏では「私もあなたと仕事したくないもの。」とため息をついた。そして今回。私がこの4月に職場復帰すると、その前の冬ごろから再び休職していることを知った。また職場の人間関係が悪化したのだろうか。優秀すぎて仕事がつまらなくなった、もしくは会社の限界を見たのであろうか。真相はわからないが、辞めるに至ってしまった。





魅力的な人なのに苦手。こんなことはありえるのか。新人のころから苦手意識の理由がなんなのかずっと言語化できなくて、のどに刺さった小骨のようだった。このままKさんは私の頭から去っていくのか。退職の連絡を受け取って、ずっと考えていた。彼女と一緒に働いたとき、どんなことが嫌だと思ったのか思い出してみようと思った。

その時は私と彼女は上司と部下の関係だったのだが、彼女は私のすべての依頼にまず疑いと否定の意思表明をした。その度に根気強く、何故それをしなければならないかの理由を述べた。しかし彼女はそれで納得することはなく、そもそもに立ち返って理想論を言った。それはね、会社という組織で動く関係上、すぐに理想どおりにはいかんのですよ。まずはあれを解決しないとだめで、あそことあそこの調整が必要で…そんな話を延々としたことを思い出した。結局、納得しないまま「こうあるべきなのに」と文句を言いながらすばらしい成果をあげた(笑)。

そもそも彼女は仕事だけでなく、普通の会話でもまず否定から入ることを思い出した。そして自論を展開した。常識を否定して、見方を変えてくれる面白さがあった。彼女の情報収集能力や論理力の高さはちょっとした会話でもよくわかった。大いに認めるところだった。しかしそれはあくまで自分に直接関わらない話題のみだ。自分に直接関わる話題について、いきなり否定から入られれば気持ちよく話を聞ける人はあまりいないだろう。

実際、仕事ではこの手の面倒くささは他の人でも体験済みだ。頭がいいのに権力を持たない人によくありがちなことだ。理想を実現するには組織で権力を持つこと、「踊る大捜査線」の室井慎次もそう言っていたではないか。これだけでは一緒に仕事をしたくないとは思わない。私の人格を否定されているわけではない。ただ意見を否定されているだけだ。冷静に聞く耳はもつ。そして私は仕事の成果を取るし、最終的に自分が負担に思わない関係を築く自信はあった。ところが彼女とは築けなかった。そこが苦手意識のそもそもなのだ。





自己保身のために嘘をつく、人を貶める、そういった卑怯な人間は人格的に論外であるが、そうではないものの、苦手な人、嫌いな人は自分の鏡だという。同族嫌悪。嫌いな人と関係を築けない、つまり自分と関係を築けない。その自分とは見て見ぬふりしてきた嫌いな自分ということだ。そうすると彼女のイソップ童話の「太陽と北風」の北風のような会話の根底にあるもの。ここが私の嫌いなところなのだろう。

それならすぐに思いついた。自己顕示欲の高さだ。その中でも私も彼女もおそらく共通しているのは「私は賢く見られたい」という欲だ。そして彼女の手法として、手っ取り早く相手を否定をし、制圧して、相手よりも上位に立つのだ。こうすると一時的にでも相手より賢いというポジションに立てる。彼女がそう思ってやっているのかは知らない。もしかすると優秀が故に純粋に「そうではない」と否定の意見しているだけかもしれない。しかし私は彼女の行動に自分と同じ欲を見た。私の持つ像。

新人のころから、何気ない会話の中で、彼女が面白いことを言ったあとに何かを期待するような目線と間、あれも会話のリズムが崩れるから嫌だったことを思い出した。その行間に「ねぇ、私を褒めて」と私は補っていた。やっぱり私がそこにいたのか。

ああ、そういうことか。自分で書いていて納得した。彼女を嫌いな理由。優秀に見られようと振舞う小賢しさ、小者感。

実は、Kさんの移動連絡を受ける数日前、彼女は私の夢に出てきた。夢の中で彼女は4、5人のチームメンバーを連れ、私の会社の席の隣のPCモニターを覗き込んで、何かがわかったという風に興奮して話していた。それを見て私は「仕事充実しているのか。私も彼女みたいになりたいな。」と思った。

やっぱり私と彼女はどこか同じ種類の人間なのだろう。会社を辞めても、仕事で活躍することを祈っている。さよなら、もう一人の私。





トゥットゥへの気付き
様子
今までYouTubeが「アンパンマン」と「ミッキー」の二大体制だったのが、「ポポちゃん」が加わった。お世話人形に興味が出てきたのか。そういえば先日、食べ終わった茶碗にアンパンマンのぬいぐるみを入れて「気持ちいいね~」と言っていた。風呂に見立てたのか。すごい。
体調
おおむね元気だが鼻水と乾燥肌。
食事
しらすが食卓に出てからご飯だけ食べるモード復活。おかず食べてくれよ。