2015年2月8日日曜日

すれ違い誕生日

トゥットゥの記念すべき2回目の誕生日。誕生会を開くその日、私たちはスタジオアリスのある最寄駅で11時半にサチ母と待ち合わせをした。サチ母は事前にトゥットゥのプレゼントは何がいいかと聞いてきたので、去年と同じくスタジオアリスで写真を撮る撮影料と写真代を負担してほしいとお願いした。その代わり、トゥットゥの撮影に同行してもよい、トゥットゥの着る衣装を選んでよい、そこで撮影した好きな写真を現像して持ち帰ってよいとお伝えした。こちらからもいつもお世話になっているサチ母へのちょっとしたプレゼントの気持ちもあった。

ところがこの日は撮影会以外にも誕生会というメインイベントが控えている。サチ母だけでなくエミィさん夫婦も呼ぶことから掃除を入念にしておかなければならなかった。ご想像どおり平日働いていると、掃除機かけなどは一週間に一度となることがほとんどで、整理整頓のような掃除も自然土日に集中してしまう。私は午前中に必死で掃除を行ったが、サチ母との待ち合わせには間に合いそうにもなかった。仕方なくジェイジェイとトゥットゥだけを先に送り出し、スタジオアリスでの予約時間12時に間に合うように家を飛び出すこととなった。

実はこのスタジオアリス、私の野望があった。それはトゥットゥが立てるようになった今年こそ白雪姫の格好をさせて七人の小人と写真を撮ってもらうことだった。他の子の参考写真を見て、あまりの愛くるしさに、ぜひうちの子も!とエゴ爆発。その実、妹のヤマナちゃんが小学校低学年の頃、この7人の小人のぬいぐるみを「コビー」と名前をつけて可愛がっていて、その様子を可愛いなあと思ってことから、実に30年近くの時を超えてその思いが叶えられたことになるかもしれない。

撮影自体はすんなり衣装選びから撮影、写真選びまで進んだ。トゥットゥはこういう時、実に大人の期待にこたえてくれて、嫌がることもなく、固かった表情もすぐさま笑顔となった。スタッフが表情をほぐそうとぬいぐるみを手に「お父さんのお腹を食べちゃうぞ~~~~!…カプッ」と実際に撮影を見守る親のお腹に接触するのだが、それを見ながら冷静に「おかーしゃにも。」「おばあちゃんにも。」とリクエストしていたので、よほど肝が据わっているのだろう。おかげで「はい、OKでーす。」の撮影スタッフのワンポーズ撮影終了の掛け声も早かった。先に撮影をスタートしたハーフバースデー(6ヶ月)の男の子、七五三の三を先行して取りに来た女の子が大泣きする中、余裕の先行終了となった。





私が待ち合わせに遅刻したことがそもそもその後のさまざまな不運(?)を暗示していたのかもしれない。撮影後、お昼ご飯を食べようということになり、皆で中華料理屋に入った。食事が終わるとトゥットゥは飽きたようで、椅子から降りると言った。私は支払いがあるためトゥットゥをジェイジェイとサチ母にお任せした。そして誕生会の食材を買うためにスーパーで物色している時事件は起こった。

「やられた!うんちだ!漏れているよ、俺の腕にも付いたもん。」

ジェイジェイはトゥットゥを抱っこから降ろし、ダウンの腕部分には染みを見せながら叫んだ。こうなるとおむつ替えをするまでだ。私は取り急ぎトゥットゥを抱きかかえ、おむつ替えスペースに急いだ。確かにばっちり横漏れしていた。タイツはぐしょぐしょだ。これは抱っこのせいでおむつがずれたからだなと思った。しかしいつうんちをしたのだろうか。漏れて腕に付くとある程度時間が経っているのではないか。でもジェイジェイが中華料理屋から抱っこしてからスーパーで買い物をする間、ある程度トゥットゥを見ているものの、力んでいる様子はなかった。

一方ジェイジェイはダウンの腕部分に染み付いたうんち汁(?)を洗いにお手洗いに行った。お互いにトイレから帰ると、私はここまで被害を拡大させたジェイジェイに腹が立ってまくし立てた。トゥットゥはいつうんちをした?私は彼女を見ていたけど気付かなかった?どうしてこうなる前に気付かなかった?

ジェイジェイは中華料理屋で椅子から下りたときにすでにガンバっていた様子があったと悪びれもせずに言った。私が会計でバタバタしている時ではないか。なぜ「うんちしたかもしれない。」と一声掛けられないのだ。あの時教えてくれればすぐにおむつ替えに行く、もしくはもっと気をつけてトゥットゥを見ていたのに。





さらに腹が立つことが次に待っていた。私たち夫婦がトイレから戻ってくるとサチ母が会計を済ませて待っていた。

「ちょっと待ってください。会計はジェイジェイという約束です。お支払いさせてください。」

私は小さく叫んだ。おそらく食材代は六千円くらいだろう。サチ母は先ほどの撮影代と写真代で十分お金を頂いているのだ。これ以上払わすわけにはいかない。私はこうなることを予想できたため、1週間も前から3回くらいしつこくジェイジェイにお願いをしていた。誕生会の食材代はジェイジェイが出してくれと。さち母にも事前にそう宣言していた。

その理由はこうだ。一つは、共働き夫婦で原則私が食事当番であるが、土日のどちらかの食事用意をジェイジェイにお願いしている関係上、月1万円を支払っていること(この中には自分のお酒代、通信費、医療費補助も含む)。もう一つは、私はトゥットゥの誕生日のためにケーキと誕生日プレゼントを買い、招待する人たちへのプレゼント代と多くのお金と時間を使っているため、少しは負担してほしいという願いからだった。

私の希望を言えば「トゥットゥの誕生会やるんだろ。これでやりくりして。」と特別イベント出費に対し1万円くらいポンと渡してほしいところ。しかしジェイジェイは節分の時に見せるような細やかさはあるものの、お金に関して言えばそういった心遣いは皆無だった。もともとお金遣いは堅く、特別な日を除き他人に振舞うことはない。その性格を見込んで、私は夫婦間のお金の役割においてジェイジェイを貯金担当に任命しているのだが、自分はそれでよいと割り切っている節がある。まあ、いまさらそれを言っても仕方ないのだが。

「私今日、お泊りするし、誕生会にはエミィ(娘)たちも来るから私が振舞わないと。」

サチ母はそう言ったが、私は何か釈然としない。「ジェイジェイッ!」と小脇を突くと彼はへらへらしながら

「だってうんちが付いて会計のときオレは留守にしてたんだから仕方ないだろう?」

と言うではないか。私だったら今、この場で「レシート貸して。いくらなの?払うから。」ぐらい母親に言うよ。このバカ野郎。

しかし私はサチ母に負担をかけているよりも、自分の負担が大きいことに腹が立って仕方なかった。ジェイジェイに向かって、そもそも夫婦間の負担が不平等だろうとぶつぶつと文句を言った。この辺りが自分が器の小さな人間のゆえんだ。本当に情けないのだが。サチ母は苦笑しながら「それは後でジェイジェイに負担してもらいなさい。」とたしなめられた。お見苦しいところを見せて申し訳ない。





夕方、エミィさん夫婦はやってきた。いつもの道ではない道を通ったせいで迷ったと連絡があった。30分も遅れて到着した。私たち夫婦以外にも何か歯車の狂う日なのだろうか。そんなことを思った。お二人はトゥットゥへのプレゼントにKico+の月と星のガチャガチャを持ってきてくれた。わー、私がインテリアにもいいなと思ってずっと欲しかったものだ!






私とサチ母が誕生会の準備をしている間、エミィさんはこのガチャガチャでトゥットゥの相手をしてくれた。ところがKikoのガチャガチャからなかなかウッドビーズが出てこなくてスムーズに遊べない様子だった。どうもウッドビーズが出てくるための穴に次のそれがなかなかセットされないようだった。本物のガチャガチャではなく玩具だからこんなものだろうとは思うのだけど。出てこないためイライラしたのかは知らないが、トゥットゥはウッドビーズを全部ガチャガチャから出して、丸いものは石、それ以外の月、星、四角、三角、ドーナツ型が特別な宝物として、選別して楽しんでいた。

このガチャガチャの出が悪いのはそもそもの構造なので故障ではないが、私たち夫婦がトゥットゥにプレゼントしたティーパーティセットはひどい不備があった。トゥットゥが急須やポットに興味を持ってカップに注ごうとするのを見ていたので、本物をいつか割られるよりはと木のおもちゃを購入したのだった。Amazonでいろいろ比較検討した結果、色がどぎつくて好みではなかったものの、お盆が付いていたことと、おフランスのメーカーということで、写真のこちらに決定。



届いてみるとポットの蓋がない、ティースプーンが1個足りない、角砂糖が2つ足りない、ボンドの跡がベットリ、塗料がはがれている、カップの取っ手が取れている、写真とスプーンのデザインが違う、ろうそくの色が違うなど、本当にひどい代物だった。それでも返品しなかったのは、どうせ使ううちに無くすだろうし、壊すだろうと思ったのと、トゥットゥが包みを開けたとたんに気に入って使い始めてしまったので、もういいかという気持ちになってしまった。すでにこのプレゼントが今日の伏線だったのかもしれないな。

それはともかく、プレゼントとは別にエミィさん夫婦は調子の悪いのPCも持ってきた。通信が詰まってしまうPCにつらくあたるフゥちゃん、それが気に入らないエミィさん、二人の夫婦喧嘩の元になっていたとのこと。そこで今日のトゥットゥの誕生会に合わせて、PCに詳しいジェイジェイに見てもらおうと持ってきたそうだ。なんて日だ。PCまでも不調だなんて! 誕生会スタートまでになんとか直すことができた。

誕生会の料理はサチ母が蒸してきてくれたお赤飯と鮮魚店で買ったお刺身が主だったが、トゥットゥには特別に唐揚げが用意された。おいしそうにたくさん食べていた。誕生会のメインとも言うべきケーキでは、トゥットゥは「ハッピーバースデー」の歌もろうそく消しもばっちり。保育園でお友達がやってきたのを4月から1月まで見てきたのだ。そしてしっかり六分の一のケーキを自分のものだと主張して囲って食べていた。





夜も更けて22時半過ぎ。エミィさん夫婦が帰った直後、プレゼントを渡し忘れたことに気付いた。デコ母から送られてきたイチゴとバレンタインのチョコレート。電話をかけるとコンビニのファミリーマートのあたりにいると言う。お土産を持ってダッシュで後を追った。コンビニに着いたが、辺りを見渡してもいない。コンビニの中に入ってみるがいない。もしかしてあっちのファミマか? それは今日エミィさんが道に迷ったときに目印にしたコンビニだった。再び走った。しかしそのファミマにもいなかった。

電話!もう一度電話をかけなおして場所を確認しよう。そう思ったら手元に電話がないことに気づく。急いで家を出たため忘れてきてしまったのだ。家に一度帰ろう。すると前方に歩いてくるジェイジェイが見えた。どうしたというのだ?

「電話忘れたでしょ。エミィたちとすれ違ったみたいだから、一緒におっかけよう。」

ありがたい。ジェイジェイの電話で確認をすると、私が最初に行ったコンビニに付近にいると言う。あれ、いなかったけど。どうも私が行ったときに、別の道を歩いていたらしい。これだから下町の路地の多い区画って言うのは…どうりですれ違うわけだ。

気を取り直して二人がいるという場所に行ったのだが追いつけない、待っていてとお願いをしてもその場所にいない。お願いまでもがすれ違う。結局、駅まで追いかけるはめになった。私はお土産を渡すまでに20分くらい走り続けていたことになる。

全てが落ち着いて、家に向かって歩き出そうとした時、ジェイジェイが意味ありげな顔をして

「おつかれさま。」

と私に声をかけた。私の今日一日のドタバタを慮ってのコメントであることは想像がついた。そのドタバタの三分の一くらいはジェイジェイが絡んでいる。それを思い出すとなにか冷やかされているような気がして腹が立ってきた。

「今日はすれ違う日なのよ。すでに私の朝の遅刻から始まっていたんだよ。うんちも食費代もおもちゃもPCもお土産も!」
「でもエミィたちには会えたじゃないの。」
「いっそすれ違ったほうがよかったのかも。すれ違ったままのほうが幸せってこともある。事情がわからなければそれ(その人が信じること)がその人にとっての真実だから。」

期待するから外れると失望するのだ。昼間の失望までがよみがえってきた。私はジェイジェイの顔を見ることもなくどんどん先に歩いた。

後ろからジェイジェイの静かな足跡だけが聞こえる。分かり合えなくてもいいと腹をたてた私に、それでもついてきて分かろうとするような行動にも思えた。ふと、ありがたいよな。これを振り払ったら人じゃないよなと思った。私は立ち止まって、彼の横に並んで家へ帰った。





なにもかもがずれた一日。それで起きる摩擦。このパワー、熱量は私の怒りだけでは消化できるまい…と思っていたら、この日トゥットゥだけは元気で、夜12時まで起きてフィーバー状態だった。世界はバランスが取れているのね。





トゥットゥへの気付き
様子
意外とフゥちゃんと好相性なのか。二人で何をするわけでもなくたたずんでいる姿が面白かった。翌日の晩、皆で美味しいと評判のもんじゃ焼きのお店へ。トゥットゥが土手から広がるもんじゃを見て「雲みたいね~」と言った。子どもってファンタスティック。
体調
うんち、漏れたけど出たから良しとしようか。
食事
ご飯、から揚げ、卵焼き、ケーキ、チョコレート。大好きなものばかり。野菜が一つもありませんがな。