2017年2月27日月曜日

「ワイルドライフ」の効果

朝、BSプレミアムで連続テレビ小説(今は「べっぴんさん」)を見ているのだが、そのままなんとなく次の番組を見ている。今は「関口知宏のヨーロッパ鉄道の旅」、トゥットゥは大好きな電車が出るとあって、外国の見知らぬ車両がテレビに映るたびに「あの電車は何?」と聞いてくる。私はテレビのナレーションを覚えているとそれをそのまま教えてやる。大概は聞き漏らしていて何鉄道かはわからないのだが、なんとなく朝ごはんを食べながら親子の会話になっている。

いつもは8時になると再びNHK総合に戻すのだが、その日はそのままBSプレミアムをつけたままにしていた。私はゴッシュに離乳食をやり、その隣でトゥットゥは朝ごはんを食べていた。「ワイルドライフ」(英国 田園地帯 広大な屋敷林にハイタカが舞う)が始まった。トゥットゥは特段、鳥や自然、外国に興味があるわけではない。が、朝ごはんには手をつけず見続けた。

「ハイタカ、すごく速いよ。ハトと違うよ!」
「羽の構造が違うんだよ。筋肉や骨の作りがハトとは違ってね、強く羽ばたける。風切羽とっていう風をうまく捉える特別な羽もあるよ。」

「フクロウはネズミ捕まえて食べるんだよね。さっきのハリネズミは食べられる?」
「うん。フクロウは鋭い爪でハリネズミの針をバリバリ取って食べちゃうんだよ。だから痛くない。」

「トナカイが出てきた!スヴェンだ(「アナと雪の女王」より)」
「トナカイじゃないよ。あれは鹿。角の形が違うでしょ。トナカイはヘラみたいなやつ。」

私は彼女が言葉を発する度にそれを拾った。私自身、動物や昆虫などが割と好きで、独身時代から習慣的にNHK「ダーウィンがきた」を見たり、「シートン動物記」など動物ものの書籍を読んだりしていた。私はきっとその成果を発揮したくてウズウズしていたのだろう。気づくと時間は番組が終了する9時に迫ろうとしていた。

ハイタカの巣立ちのシーン。トゥットゥは真顔で聞いてきた。

「なんで子供は家(巣のこと)を出て行くの?」
「鳥も大人になると自分のことは自分でやらなないといけなくなるの。だから自分でなんでもするために家を出て行くの。」
「なんで自分でなんでもやらなきゃダメなの?」
「それはね、餌を運んできてくれたお父さんや、家で守ってくれていたお母さんが必ず先に死ぬからだよ。いなくなったら自分でやらなければダメだもの。」

しばらく沈黙があった。そしてトゥットゥは若干涙目になりながら言った。

「トゥットゥは小さいからまだ一人でお外にはいけない…」

なんと巣立ちを自分に重ねたのか。なんと想像力豊かな子だろう。私は感心した。そしてすぐに声をかけた。

「トゥットゥはまだ小さいもの。家を出なくてもいいのよ。そうだなあ、今トゥットゥは保育園でしょ。小学校、中学校、高校、大学と勉強して、社会人になったら大人。年は22歳くらい。それで家を出て行くんだよ。」

トゥットゥは一生懸命22まで年を数えた。

「どうしても一人で出て行くの? 一人は寂しいよ。」
「いつか結婚して家族を作れば一人じゃ無くなるよ。」
「じゃあ、トゥットゥはゴッシュと結婚して家を出て行く。」

トゥットゥは結婚は大好きで仲良しならば誰とでもできると思っているらしい。しかも重婚あり。その例を聞くたびに私は訂正しているのだが、今回も姉弟の結婚だけあって緩やかに訂正した。最後に

「中学生くらいになると一人になりたい時がくるよ。」

とだけ付け加えた。

普段は NHK「ダーウィンがきた」を見せてもほとんど興味を示さないトゥットゥだったが、なぜこんなに集中して番組を見続けたのだろう。保育園に行く途中考えた。そういえば、Nスペ「完全解剖ティラノサウルス 〜最強恐竜 進化の謎〜」は何度も見る。NHK「ダーウィンがきた」のような子供を飽きさせず、且つわかりやすい30分番組より、大人の見るような番組が好きなのだろうか。まさかね。

そして一つの可能性を思いついた。私とのおしゃべりが楽しかったのではないか。「ダーウィンがきた」を見せる時は私は家事をしていることが多く、放ったらかしだ。また一緒に見ても番組自体にナレーションが多いため、私がしゃしゃり出る幕もない。だから彼女も特に興味を示さない。よく聞くのは「子供は親の言うことは聞かないが、親のやることは真似る」と言うこと。やはり親が楽しそうにしているのが一番なのかもしれない。彼女の好奇心がどんどん引き出されるよう、私の楽しんでいる姿をたくさん見せられるといいと思う。