ジェイジェイが車を停め直しに行っている間、影のある東屋でのんびり湖を眺めていたかったのだが、トゥットゥには真っ先に湖畔の公園が目に入り、あれで遊ぶと言い始めた。鉄製遊具は日に当たってホットになっている。湖畔とはいえ影もなくじりじりと太陽が照り付ける。ゴッシュを抱っこしているため、さらにお腹あたりが蒸れる。暑くて死ぬ!
若干ぐったりしながら湖畔の公園でトゥットゥを遊ばせていると、同じく公園で遊んでいた子連れ家族の祖父と思われる人が
「ダムカードもらってきたよー!」
と言った。ここは相俣ダム、赤谷湖というダム湖だったのである。
ダムカード。国土交通省発行のカード型パンフレット。これを集めに全国のダムを行脚する猛者もいるらしい。私は近所の本屋で仕入れてあった「ダムカードかるた」で知った。店員に聞くと、今一部マニアの間で流行りだという。うぬぬ。結婚から出産、子育てに突入してまったく知らんかったわい。
ミーハーな私も例に漏れずダムカードをもらいに管理事務所まで行くと、ちょっとした展示室があり、まずそこに入ることにした。ダムカードもそこでもらえた。そこではダムの構造の展示物や地形図などがあり、ざっと群馬全域の地形がわかった。山があるところに川があり、川があるところにはダムがある。ダムのあるところには湖がある。それがこの地形図ですぐにわかった。
前日の榛名神社から猿ヶ京に抜けるのに眼前に現れた美しい湖、榛名湖。中禅寺湖や芦ノ湖に匹敵する観光資源ではないか! 昨日初めて見て興奮し、そして今まで知らなかったことを恥じた。よく見ると地理的にも栃木の中禅寺湖と近いことがわかった。あの標高での自然の湖ということは、中禅寺湖と同じカルデラ湖だったのだ。となると、ふもとから見た面白い山の稜線は火山ドームだったのか。榛名富士の美しい形はもちろんだが、周辺の個性的な山の形にも魅了されたのは言うまでもない。
そして榛名湖から県道28号線で山を下るときに車のナビに案内された「ここは榛名自然観察教育林」と書かれた深沢川添いの林道。道?車道ですかここは?という1台しか通れない狭さ、異様なカーブの連続、覆い重なる木々の葉、道路に日光がかすかにこぼれるだけの暗い道、脇の落ち葉が積み重なって溢れた路面、川沿いには申し訳程度のガードレール、完全なる山道。ジェイジェイはブレーキの押しすぎで、「足が痛い!」と下り中ずっと騒いでいた。運転手には悪いが、私はこういう雑木林系の山道は大好きで、歩いて通りたいくらいだった。
ああ群馬、ここは山の国なのだ。大いに気に入った。私は断然山派なのである。
赤谷湖畔には上杉謙信ゆかりの桜の木があった。そもそも猿ヶ京という名も上杉謙信が関東に赴く際に、ここに申の年の申の日に陣をはったためという説があるらしい。戦国時代ファンのジェイジェイにはちょっとしたご褒美となった。